キバユウ pixiv。 #キバユウ 18歳ライン

#キバユウ #ビトユウ 結婚にまつわる短編集

キバユウ pixiv

クリア後 カプ混在 口調迷子 ねつ造あり 地雷には配慮しない 繋いだ手だけは キバユウ 「大丈夫ですよ」 ポツリとほんの一粒溢れた涙。 たったそれだけで、ユウリの手を取るには充分だった。 ユウリはチャンピオンではなくなった。 防衛年数はダンデに次ぐ歴代3位だったが、あのダンデを倒したのだからそれを超える防衛年数を重ねられて当然、という風潮があった事は否めない。 世間のほとんどは新しいチャンピオンがそれだけ強かっただけで、ユウリを悪く思ってなどいなかったし、彼女の実力を疑うものなどいなかったが、ユウリを悪し様にいう層がいなかったわけではなく。 そういった声だけはでかい部外者に、だんだんとユウリの精神は削られていった。 それでもユウリは気丈に前を向いて、笑顔で。 辛くはないかとキバナが声をかけただけで、決壊しかける程だったのに。 強引にユウリの手を自身のパーカーのポケットに突っ込むと、ユウリの手はかわいそうな程冷たく震えていた。 壊れてしまいそうなそれを強く握りこんで、キバナは彼女の手を決して離さないと心に決めた。 キバナに手を引かれ実家に戻ったユウリは、久しぶりに安心できる場所で泥のように眠って、目が覚めたら母とキバナがリビングに向かいあって座っており、首を傾げつつ母の隣に座ろうとして近づき、母にキバナの隣に行くように促され、訳がわからないままテーブルに視線をやって、そこにあった紙に硬直する。 婚姻届だ。 キバナの名が記入済みで。 あとはユウリだけだと言うように、彼女が座る予定の場所に印鑑と一緒に置かれている。 キバナが椅子から降り、跪き、指輪を手にして。 「世間体とか、他の奴らの反応とか、ファンとかアンチとか全部拾えたら最高だよな、でも出来ないなら、オレはユウリだけで良い。 ユウリが良い。 ユウリがずっと笑って、オレの隣にいてくれれば他に何もなくたって良い。 ユウリの笑顔を守る権利が欲しい。 だからオレと結婚してくれ」 ユウリは言葉もなくキバナの熱く燃える瞳を見下ろして、次第に湧き上がる言葉のどれもがこの場に相応しくないと感じ飲み込み、昨日とは違う理由で震える指を、薬指を、キバナの差し出す指輪に通して。 ユウリと同じように震えるキバナの手に絡ませて、彼の前に両膝をついて祈るように額を合わせた。 「キバナさんが居てくれたらそれで充分幸せで、他のどんな事だって気になりません」 その日に婚姻届を出し、2人は夫婦になった。 [newpage] うちに帰ろう ホプユウ 旅が終わり、チャンピオンと研究者になって、ユウリはシュートシティ、ホップはブラッシータウンが活動拠点になって数年、ユウリから困ったように不動産物件をまとめて持ってきてホップに差し出された。 1人で住むには広すぎる物件に首をかしげるホップの手を握って、 「ホップとこれ以上離れていたくない。 実家から通ってる今よりはどうしても遠くなっちゃうけど、私と一緒に暮らして欲しい」 この時2人は付き合っていてわけでも無かったが、ホップは迷わず頷いたし、同時にユウリに気持ちを伝えもした。 あたふたと、急な事で綺麗な言葉を選べたりもしなかったが、ユウリは嬉しそうに頷いてくれて。 ずっと抱えてきた初恋を一足跳びに同棲まで発展させてしまい、実家を出るときには両家でお祭り騒ぎになってしまい、ユウリとホップは苦笑して顔を見合わせたりもした。 基本的に、ホップの方が帰りが早い。 よっぽど研究に熱が入ってしまえば帰らない時もあるが、寝不足は美容にも思考にも悪い!とソニアが大きく主張している事もあって研究職としては珍しく定時に帰る事がほとんどだ。 対してユウリはチャンピオンとしてテレビ露出やエキシビションマッチが夕方過ぎから始まる時も多い事から、家にいる時間がまちまちで大変そうだ。 それでもスケジュールを調整して出来るだけ遅い時間の仕事は入れないようにしているらしく、極力一緒にいたいと思ってくれている事が感じられてそれだけでホップは幸せを感じる。 夕食を仕込みながらテレビに視線をやると、キバナとユウリの出演するCMが流れる。 つくづくユウリの周りにいるのは格好いい大人ばかりで、ホップでは追いつけない事ばかりで嫌になってしまう。 それでも。 今すぐいい男になれるのであればなりたいが、そんな事をユウリ望んでいるわけでもないので、焦らずにいる。 彼女もきっと同じ気持ちだろうから。 「ただいま!」 バタバタと玄関先が騒がしくなって、ユウリがリビングに駆け込んでくる。 まだ少女の面影を強く残して、ユウリはそれでも綺麗になって。 ホップはどんどん背が伸びて、ユウリをすっぽり包んでしまえるようになって。 「お帰り!ご飯できるぞ!」 「わー!ありがとう大好き!明日は早いから私が作るね!」 洗面所からユウリか叫び、その慌しさにホップの口からは殺しきれなかった笑いがまろび出る。 旅をしている時に感じた距離はもうなく、ここにいるのは同じ速度で一緒に成長する、愛する女の子だけだ。 [newpage] いつかその時が来たら ビトユウ 責任を取ってというビートの台詞が事あるごとに頭の中を駆け巡り、ユウリはいつも気が付いたらアラベスクジムの前に立っていて、今はもうジムの主人となったビートに呆れ顔でまた来たんですかなんて言われて。 バトルをする日もあれば、ただ生垣に隣あって腰掛けて無駄話に興じる日もあって、友だちというには距離がある、他人というには近過ぎる妙な関係を続けている。 ユウリは人生の責任というものを考えるたび、自動的に結婚と続いてしまうのだけれど、当然そういった意味で言われた訳がなく。 そもビートはどうにもそういう恋愛感情を含む事柄を信用していないようであった。 その割、人に依存する傾向があるのだから、ユウリは心配でたまらなくなって大声で叫びながら頭を掻きむしりたい衝動を何度も抑えてきた。 悪い大人に利用されたらどうするの!と叫びそうになっては、一概に悪いと言い切るには微妙ではあるが騙されるというか利用され済みのビートであるので光の速さで口を噤んで。 「ビートくん今楽しい?」 代わりに疑問を投げかけると、ビートはきょとりとして、それから髪をくるりと回した。 「まぁあなたと話すのは、嫌いじゃないですよ」 そういう意味じゃない、ユウリは喉まで出かかった悲鳴とともに言葉を飲み込んで、何で急に、なんて照れたようなムスッとした表情のビートをまじまじと見上げた。 「ちゃんと責任とるね…」 「さっきから何の話をしてるんですか?」 愛も恋も信じていないビートがいつかその執着の意味に気がついた時、ちゃんと責任をとってあげられるように、ユウリはこれからも側にいようと密やかに心に決めた。 そしてそのいつかが来たら 「その時は、家族になってね」 「…!だから何の話を…!」 にこりと笑みを浮かべたユウリがあまりに愛おしいものを見る目でビートを見るものだから、ビートの心臓は驚くほど早く血液を送り出し、身体中を血液だけではない何かが巡るような妙な心地になった。 かぁっと熱くなる顔を咄嗟に腕で隠すようにして怒ってますよとアピールするように盛大に眉を顰めてみても、ユウリは変わらずふにゃふにゃの笑みでビートを見上げるばかりなので、頭の中で駆け巡った様々な文句は結局一つも口に出せず、ムスッとした顔も崩せないまま、ビートはただユウリの隣で大きくため息をついただけだった。 [newpage] 未来に形勢逆転する ネズユウ ロックなんてものには縁のなさそうな大人しめな服装を好む少女を、歳の離れた妹と同じ歳の少女をまかり間違って好きになってしまって、さらにまかり間違った事に少女の方もネズを好きになってしまったなんて現実を、ネズは受け入れ難く思っている。 妹は無責任に好き合ってるなら問題ないなんて焚き付けてくるが、問題も大有りで。 お前は兄を犯罪者にしたいのかと何度となくマリィの暴走を食い止め、しかし年頃の女の子の行動力はネズの想像を遥かに上回り、またしてもユウリと2人きりにされてしまった。 「ネズさん、なんでこっちを見てくれないんですか?」 ぷっくりと頬を膨らませて、ずいとネズに詰め寄ろうとするユウリをちらりと見、ようとして全力で斜め上を見上げる。 キャミソールの胸元のレースが頼りなくたわみ、出会った頃よりは幾分か女らしい身体つきになったユウリの、まさしく女の象徴のような膨らみを容赦なく晒す。 スカートこそ履いていないがホットパンツはむしろスカートよりも際どいラインまで晒し、そのくせシャツワンピースで隠して現れネズにしか見せないという徹底ぶり。 脳裏に浮かんだマリィが男見せんしゃいと拳を握り、同じように脳内でやめさせなさい、これは兄に効く。 と懇願してみたが、当たり前にマリィは脳内だけの存在だったので現実のユウリをどうにかしてくれるはずもなく。 「お前もっと大人しい格好が好みでしょう」 「別にこういう格好が嫌いな訳じゃないですよ。 …似合ってませんか?」 「似合ってるのが問題なんじゃねぇですか」 クソが、大人の理性で遊んでくれるな。 ネズはわーいと腕に絡みつくユウリが当たり前に胸をぎゅうぎゅう押し付けてくるので、上を向いたまま目元を開いた手で押さえた。 ネズはユウリやマリィと比べれば当然大人ではあるが、はっきり言って性欲が旺盛な若者に分類される。 好いた女にこんな事をされムラっと来ないほど枯れてもいないし、理性はほとんど崩れかかっていると言ってしまってもいい。 ただネズは犯罪者になりたいわけでもなかった。 「言っときますが、オレは結婚するまで手ェ出さねぇんで」 「え!?結婚は硬派すぎでは!?」 「わかったら早く結婚出来るようになりやがれ」 ほとんど目をつぶってユウリのシャツを全部閉じてしまうと、ユウリは不満そうながらも、頬を染め、襟元を掴んだままのネズの両手を包み込んでちゅうとリップ音を響かせた。 「すぐ大人になるので、ちょっと待っててくださいね」 「待てんくなる事ばするなって言いよーやろ!」 ばっと飛び退いたネズが珍しく大声を出すので、ユウリはしてやったりというように笑みを浮かべた。 [newpage] 執着したのはどっち ダンユウ 正直に言うと、行き止まりに立っているような気分になる時があった。 毎年キバナとバトルをして、もちろんキバナは強いトレーナーではあるが、己を倒すほどではなく。 心の中にどうしても埋まりきらない何かを抱えていた。 ホップとユウリに推薦状を渡した時、期待と同時にそれでも自分やキバナの本気には及ばないのだろうという諦めのようなものもあった。 予想外の事は山ほどあった年ではあったが、結果としてユウリがダンデの前に立ち、新たなチャンピオンになった瞬間に、驚きや悔しさや喜びとともに、ダンデは心の隙間を埋める存在を見つけた。 見つけてしまったというべきか。 恋とか愛とかと言うよりはもはや執着のように、ダンデはユウリを求めていた。 気が付けば彼女に異性が寄り付かないように手を回していて、過保護すぎやしないかと周りに苦言を呈されても、ユウリ本人は何も言わないのをいいことに親切なフリで彼女の恋愛の芽を潰すだけ潰して。 ユウリの前では余裕な大人のフリをして。 自分のことながら滑稽で、それでもダンデには彼女を求める事をやめられなかった。 「ダンデさんいつもありがとうございます」 「好きでやっている事だ」 花がほころぶように笑うユウリにダンデは笑い返し、口の中で言葉を反芻させる。 そう、好きだからやっているだけだ。 「でも今日は、そう言うのもうやめてもらおうと思って来ました。 私とフルメンバーで本気でバトルして下さい。 そして勝った方が…婚約指輪を買ってもいいって事で」 心臓が凍りつき、息が詰まった前半のせいで、ダンデはうまく言葉を処理できず混乱する。 「ユウリくん、ちょっと…意味が…」 「あんな執着心たっぷりな目で見られて、わからないと思います?ホップなんて基本ダンデさん全肯定なのに兄貴やばいから逃げた方が良いぞって言ってましたし、キバナさんもソニアさんも大丈夫?っていつも確認してくれてましたし、仲が良い人はみんな気がついてます。 まぁそんなことはどうでも良くて。 成人まではもう少しですし、私としても逃がしてあげるつもり無いので」 私服のユウリにはマントが無い。 だと言うのにダンデには彼女の背にマントがたなびくのが見えるような気がする。 「私がダンデさんのやる事をありがとうって受け取ってるのは、私だってダンデさんしか要らないからですよ。 ほらダンデさん、構えてください。 私はもうダンデさんに似合うリング見つけてるんで、後はもう勝つだけです」 貫くような強気な視線に、ダンデの背中をぞわぞわと何かが駆け抜ける。 自然と釣り上る唇もそのままにダンデもボールを構えて声を張り上げた。 「悪いがユウリくん!オレだってずっと前からこれというものを見つけているんだ!この勝負、オレが勝たせてもらうぞ!」 2人の指に輝くリングがどちらの選んだ物になったのかは、2人と2人のポケモン達だけが知っている。

次の

#キバユウ 吸血鬼と愛し子の話

キバユウ pixiv

キバナさんが好き。 そう気付いたのはわたしがガラル地方のチャンピオンになってしばらくしてからだった。 チャンピオンになったあの後、インタビューに答えたり雑誌の特集で取材に呼ばれたり、町を歩けば声をかけられバトルを申し込まれ、とにかくてんやわんやでなかなか自分の時間を取れない状態だった。 そんな中で起きたシーソーコンビによるダイマックス事件。 一番最後に立ち寄ったナックルスタジアムでダイマックスポケモンを鎮めた後、彼がわたしに「困ったことがあったらいつでも呼んでくれよな」と言ってくれた。 「助けてくれてありがとう」「なにかあったら言ってね」みたいな言葉は今まで助けに行ったすべてのジムで言われて、もちろんとても嬉しい気持ちになったのに、なぜか彼の…キバナさんの言葉は嬉しいだけでなく安心するような、とにかく全然違って聞こえていた。 なんでキバナさんの時だけ? 考えても考えてもわからなくて、考えるだけでは足りず動画サイトで彼の試合を見てみたり、今までの彼との会話を思い出したりしていたらとっくに夜になっていて。 気付いたらなんだか心がとてもあたたかな気持ちになって…。 このあたたかな気持ちの正体がわからなかった。 そんな状態のまま朝を迎え、朝食でも食べに行こうかとナックルシティを歩いていた時、偶然にもそのキバナさんに出会った。 「ユウリか。 偶然だな。 」「これからはオマエもこのキバナさまの目標だからな。 覚悟しとけよ。 」 そんなことを言われたような気がする。 たくさん彼のことを考えた後に改めて直接話してみて、このあたたかい気持ちの正体がわかった。 わたしはきっとキバナさんのことがずっと好きだったんだ。 今まではダンデさんに勝ちたいという気持ちが一番だったから、この気持ちに目を向ける余裕がなかっただけで。 わたしに優しく笑いかけてくれた、応援してくれた、一人のトレーナーとして見てくれた、彼のことが好きなんだと。 人間って不思議で、キバナさんへの気持ちに一度気付いてしまうと、もう彼のことしか考えられなくなった。 今なにをしているんだろう?と考えてしまったり、彼が出ている番組をついチェックしてしまったり、彼の試合の観戦に行った事もあった。 キバナさんと連絡先を交換していたこともあり、何度か会う機会が作れたし、メディアの取材で一緒になった時は帰りが一緒になったり、バトルを申し込まれることもあった。 いつしかチャンピオンになる前よりもキバナさんに合っている時間が増えていたように思う。 キバナさんは私に合うたびに優しく笑ってくれて、バトルの時はとても勇ましくて。 そんな日々が続いたある日、わたしは彼にこの想いを伝えようと決めた。 [newpage] 今日一緒に食事をしたユウリが、「伝えたいことがある」と言ってきた。 なんでも「すごく大事なこと」とのことだったので、ここ最近のユウリの表情を思い出してキバナは頭を悩ませた。 ユウリはおそらく自分に好意を抱いているのだろう。 女とはいえ10代前半だ。 「好き」と口にしなければ好意というものは相手にはわからないと思っている。 ユウリのあの表情を見ればわかる。 あれはオレさまを慕っているとかそんなレベルではないことを。 自分もそこまで鈍くない。 チャンピオンになったユウリがこれからどんどん大変になるのは目に見えていた。 まだ10代の彼女にチャンピオンという肩書きは重い。 だからこそ、ユウリが困っている時は大人として支えてあげたいと思っていた。 …そう、大人として。 だからユウリから誘われた時はなるべく断らないようにしていたし、バトルが好きな彼女にバトルを申し込んだりもした。 …もちろん、強者だから戦いたいという気持ちもあったが。 ユウリは強い。 強いが、まだ世間を知らない。 チャンピオンという肩書きに押し潰されて、まだ若い彼女のトレーナーとしての才能をくすぶらせてしまうなんて、大人としてジムリーダーとしてあってはならない。 一人のトレーナーとして実力を認めつつも、大人として、妹のようにユウリを見ていた。 それに、仮に自分がユウリを女として見ていたとしても世間はそれを許さないだろう。 ユウリはまだ子供だ。 万が一関係が世間に知られてしまった時、当然自分は責められる。 ナックルシティのジムリーダーとして、ジムトレーナー達やスポンサー、多くの人々に迷惑をかけてしまうだろう。 自分は背負っているものが多い。 そして、最後に傷付くのはユウリ自身だ。 ユウリのあの笑顔を思い出すと胸が痛む。 けれど、ユウリの気持ちがこれ以上大きくなる前に、「そんなこともあったね」と幼い頃の淡い思い出程度に止まるように、大人としてはっきりと伝えなければならない。 その気持ちには答えられない、と。 「ユウリからの気持ちは嬉しいぜ。 …けどな、オレさまはそれに答えてやることは出来ないんだ。 」 …ああ、つい先ほどまで恥ずかし気に顔を赤らめていたユウリの顔がみるみるうちに沈んでいく。 どうして?と訴えるかのように。 「もちろん、ユウリのことは大好きだぜ。 トレーナーとしても認めている。 それだけは信じてくれ。 」 「…でも、女の子としては見れない…ってことですよね。 」 「…ごめんな。 」 ユウリの小さな体が、さらに小さく見える。 「っ…。 」 ユウリがはらりと涙をこぼす。 慌てて目をぬぐうが、その行為こそが泣いていることを自身に気付かせ、よけいに涙を誘う。 「ごめんなさい…。 」 そんなユウリの姿に大丈夫かと思わず手を差し伸べそうになったが、慌てて手を下ろした。 ユウリにこんな顔をさせてしまったのは他でもないオレさま自身だ。 自分が泣かせる原因を作っていながら、泣くななんて言う資格はない。 「でも…ありがとうございました。 わたしの話を聞いてくれて。 」 「……。 」 「さようなら。 」 ユウリが背を向け走っていく。 それを追うことは出来ない。 してはいけない。 この答えが間違いでなかったとしても、一人の女を傷付けてしまったのだから。 けれど、先ほどのユウリの涙が頭に焼き付いて離れない。 自分には、これ以上なにも出来ない。 なにもできないならせめて、こんな時涙をぬぐってくれるような男にいつかユウリが出会えるようにと願った。 [newpage] あれから数年。 18歳になったわたしは、ナックルシティを歩きながらあの日のことを思い出していた。 彼にふられたあの日のこと。 その日は食事にも手が付かなくて、とにかく一日中すすり泣いていたように記憶している。 彼への気持ちは彼以外に伝えていないけれど、相当暗い顔をしていたのだろう。 ホップやマリィが声をかけてくれたり連絡をくれたり、とにかく周りが気を遣ってくれたのを覚えている。 キバナさんとはあれからリーグの行事などで何度か顔を合わせて気まずくなったりもしたけれど、彼は気を遣いつつもなるべく普通に接してくれていた。 それもあって以前のような関係に戻れたけれど、お互い忙しくなってきたこともあってもうほとんどまともに顔を合わせていない。 たまにテレビや雑誌でみかけたり、彼のSNSをチェックして、(元気そうだなぁ)なんて思うくらいだ。 相変わらず彼のSNSは更新頻度が高く、人気だ。 わたしはSNSをほとんど更新しないから、チャンピオンなのにフォロワーが彼より少ない。 やっぱりキバナさんは人気者だな。 この数年で彼への気持ちがなくなったかと言うと、正直よくわからない。 ただ、あれ以来一度も誰かに恋をしていない。 彼のことはかっこいいと思うし、トレーナーとして尊敬もしているのは変わらないけれど。 この数年でわかったことがある。 それは、大人と子供の恋愛の難しさだ。 あの時のわたしはまだ10歳そこそこで、どう贔屓目に見ても子供だ。 女として未熟だったわたしが恋愛対象になんてなれるわけがないし、仮にわたしをそういう目で見てくれたとして、安易に恋仲になっていいものではなかったのだと。 それともうひとつ、ナックルシティには何度も訪れているけれど、ここ数年一度も彼に会ったことがない。 こんな大きな町のジムリーダーだもんね。 本当はとても忙しい人で、そう簡単に会える人じゃない。 でもあの時の彼はわたしのために何度も何度も時間を作ってくれてたんだと。 大人として、チャンピオンの重荷を少しでも軽く出来るようにと。 当時は全然わからなくて、キバナさんになにか悪いことをしちゃったんじゃないかとか、わたしの顔が髪型が服装が…とか色々考えたっけ。 そんなことばかり考えて生活してきたから、けっこう女らしさは磨けたんじゃないかなあ…もしかしたら今なら…なんてね。 わたしの恋はあそこで終わったんだから。 昼食をすませ店の外に出ると、10歳くらいの少女に「キバナさんですよね!ファンなんです!」と声をかけられ、写真を求められる。 装いで察しは付いていたが、やはりジムチャレンジャーのようだ。 もしかしたら、そのうちこの子とバトルする日が来るかもしれない。 「頑張れよ!」と声をかけ、少女と別れると、ふと、ジムチャレンジャーだった時のユウリのことを思い出す。 「そういえばもうしばらく会ってないな…。 」 最後にまともに会ったのはいつだろう。 一年二年…いや、下手したらもっと前だ。 (ワイルドエリアに近いからってこの町にしょっちゅういるって話だったが。 …まあいるわけないよな。 ) そんなことを考えながら歩いていると、どんっと前を歩いていた人に軽くぶつかってしまった。 「あ、悪い」 「ご、ごめんなさい!」 どうやら女性だったようだ。 「怪我はないか?」 「…キバナさん?」 キバナはこの町のジムリーダーのため、だいたいはこういう反応になる。 このガラル地方でキバナの名前を知らない人のほうが少ないためこの反応は当然と言えるが、その女性の顔を見た時、キバナは驚きを隠せなかった。 「…ユウリ?」 背が伸び、大人びた顔付きになっていたため最初は気付かなかったが、彼女は間違いなくたった今思い浮かべていたあのユウリだ。 …しばらく見ないうちにこんなに大きくなってたんだな。 ジムチャレンジで握手した時よりも大きくなった手はほんのりピンクに色づいたネイルが、脚もあの時より長く、スラリとしている。 「…あっ……。 はい、ユウリです。 お…お久しぶりですね…!」 「やっぱりユウリか!元気だったか?」 「……。 キバナさんこそ元気でしたか?」 元気だったか?の問いに答えてくれなかったことが引っかかったが、彼女はあの時のあどけなさを少し残しつつも、大人びた顔で笑って言った。 「オレさまは元気だったぜ!最後に会ったのっていつだろうな?なかなか会えないヤツはSNSでチェックしたりするんだが…オマエ全然更新しないからな。 」 「あはは…わたしは見てるほうが楽しいんで。 …SNS、チェックしててくれてたんですね。 」 先ほどの少女の影響なのか、あの時のユウリの泣き顔がフラッシュバックした。 あれから数年。 あの時のことはもう引きずっていないのだと思いたい。 会話にものってくれているし、普通に笑いかけてくれるのだから。 「なあユウリ、久しぶりに会ったんだ、どっかでお茶でも飲まねぇか?」 「ぜひ!」 先ほど昼食をとったばかりなのはひとまずおいておき、つい反射的にお茶に誘うと嬉しそうに返事をする。 その時のふわりとした優し気な笑顔も、やはりあの時のユウリよりも大人びている。 「ユウリ、」 「はい?」 綺麗になったな、と言いかけたのを反射的に抑える。 この綺麗とはいったいどういう意味での発言なのだろうか。 いや、言葉通りの意味じゃないか。 そもそもなぜ言うのをやめたのだろうか。 「いや、なんでもねえ。 」 「そうですか?」 ユウリがこてんと首をかしげると、やわらかな髪がサラサラと垂れ、白い首筋があらわになる。 その首筋が視界に入り、思わず目を逸らす。 なんだろう、この気持ちは。 喫茶店に到着しても、なんだか気持ちが休まらなかった。 ユウリの話はしっかり聞けたが、自分がいったいなにを話したのかまったく覚えていない。 というか、「ああ」とか「そうなのか」とか「すげえな」とか相槌くらいしか出来ていなかったような気がする。 [newpage] まさかナックルシティで彼に会えるなんて。 久しぶりに彼に会って、ああ、やっぱりわたしは彼のことが好きなんだな、と確信した。 それでも昔ほど気持ちが高ぶらないのは、一度断られていてもう彼との未来は望めないとわかっているから。 そう思うと少しだけ辛くて、彼の「元気だったか?」という質問ははぐらかしてしまった。 あの時と変わらず接してくれる彼。 あの時のことを今はどう思っているんだろうか。 知りたくてたまらないのに、そのことを彼に気取られないよう必死に取り繕った。 誘われた喫茶店に到着しても、ついくだらないことをべらべらと喋ってしまい、彼が話す間を与えられていなかったような気がする。 [newpage] ユウリのことが好きになってしまったんだ。 あの後、彼女が「そろそろ用事があるから」と言い出したので喫茶店から出て別れることになった時、思わずユウリを呼び留めようとしていた自分がいた。 けれど、すんでのところでその行動は抑えた。 一度告白され断った人間に、「やっぱり好きでした」なんて簡単に言っていいものではない。 あの日ユウリを泣かせたのは他でもない自分だ。 きっと深く傷つけてしまっただろう。 それに、幼いながらも勇気を出して思いを伝えてくれた彼女を傷付けていながら、久しぶりの再会で彼女に大人を感じた途端好意を抱くなんて、あまりにも都合がよすぎる。 そんな自分にユウリを愛する資格なんてないのだ。 だが、考えれば考えるほどあの時のユウリを忘れられない。 好きなんだ、と言葉にした途端、彼女への思いが次々溢れてくる。 「……ユウリ。 」 高ぶった気持ちを抑える術を、キバナは持っていなかった。

次の

キバユウとかない作品

キバユウ pixiv

「さっむ!さすがに夜は冷えますね~。 」 特訓という名のポケモンバトルをひとしきり終え、ナックルスタジアムを出ると辺りは暗くなっていた。 吐く息は白く、頬を撫でる風は刺さるような冷たさだった。 「今日は雪降りますかね~。 」 左隣にいるユウリは両手を合わせ、はぁ~と息を吹きかけ手を温めていた。 」そう言って左手をユウリの前に差し出す。 首をひどく下げないと視界に入らないほど小さなユウリは自然と上目遣いで、頭の上にはてなマークが見えてきそうなほどキョトンとした顔をしていた。 「手温めてやるよ。 」 無理矢理ユウリの右手を奪い取り、自分のポケットの中へとしまい込んだ。 自分の半分ほどの手の大きさで、強く握りしめたら壊れてしまいそうなほど華奢だった。 寒さのせいか鼻を赤く染め「キバナさんの手あったかい。 」とくしゃっと笑って見せた。 「ホテルまで送ってやるよ。 予想以上に遅くなっちまったし。 」 「子ども扱いしないでくださいー!」 そうやってブーたれて天邪鬼なところがまたガキ臭い。 でも、その表情にいちいち惑わされる俺もまた大人とは程遠い。 「それに私もうチャンピオンなんですよ!」 エッヘンと鼻高々に言い放つ。 そう、コイツは俺を負かした後もサクッとダンデまで倒してしまった。 チャンピオンになった今も毎日バトルしてポケモンの世話して、ポケモン漬けの生活で俺の入る隙すら与えない。 それでもなんとか関係を切りたくなくて、特訓と称してナックルシティに呼びつけてしまう。 俺も大概だが、ポケモンのこととなるとホイホイとどこにでも一人で行ってしまうコイツもコイツであまりに無防備すぎる。 そうこうしているとすぐにユウリの滞在しているホテルの前に着いてしまった。 ほとんどユウリのポケモンとカレーの話で道中話題は絶えなかった。 左ポケットに入れたこの手を離すのがひどく惜しいと感じた。 「キバナさん、私の部屋寄っていきませんか?チャンピオンになった記念にホテルの方のご厚意でスイートルームに泊まってるんです!ベッドもお風呂もすっごく大きいんですよ!」 目を輝かせ無邪気に言う。 コイツにとってのそれは全く他意のないもので、純粋にスイートルームを見せたいだけなのだ。 ほんとポケモン以外のことはからっきしで、いい意味でも悪い意味でも天真爛漫だ。 そして、左手に感じるこの温もりをなくしたくない俺はその誘いにまんまと乗ってしまう。 ホテルの部屋に入るとそこには何度か見た光景が広がっている。 そう、俺はこのホテルのスイートルームに来るのは初めてじゃない。 最初はジムリーダーになった時、それ以降何度かこの部屋には泊っている。 部屋に入った途端、ユウリの右手は俺のポケットを離れ、その流れでベレー帽を脱いだ。 ポケットの中に残った温かさを感じながら、室内をチョロチョロと動き回るユウリについて回る。 「見てください!お風呂!おっきい!」「見てください!テレビ!大画面です!これでポケモンバトル見たらすごい迫力なんだろうな~。 」「お手洗いなんて二つもついてるんです!」「ソファもこんなに大きくてフカフカ~。 」 絵に描いたような満面の笑み、大振りのリアクションで俺の視線を離してはくれない。 「あと、ベッド!大きくないですか?枕もこんなにいっぱい!」 そう言って、ベッドへとパフンと仰向けに転がった。 その瞬間、ユウリのかおりがふわっと香った。 今にも飛びそうな理性を押し殺して、キングサイズのベッドに対してあまりに小さすぎるユウリの隣に座った。 「一人で寝るにはちょっと大きすぎるんじゃないか?オレ様が一緒に寝てやろうか?ユウリ……。 」 隣で寝転がるユウリに視線を落とすと、口を尖らせ眉間にしわを寄せて難しい顔をしていた。 少し煽って反応を見るつもりだったが、想像以上に嫌がっているのかと今言った言葉の全てを撤回したい気持ちに苛まれた。 「う~ん、キバナさん寝相悪そうだから一緒に寝るのはちょっと……。 イビキもかきそうだし……。 」 そっちかよ。 素で「はぁ~……。 」というため息がこぼれた。 それは呆れもあるが同時に安心感でもあった。 悪い大人を知らない、純粋無垢で無邪気すぎる存在を少しだけ汚したい気分になった。 ユウリの華奢な両手首を押さえ、馬乗りになるようにベッドの上に膝立ちをした。 ユウリは相も変わらず、邪心の欠片もない表情で俺の瞳を覗き込んだ。 本当は全てを見透かされているのかもしれないと思うほど吸い込まれそうな目だった。 「送り狼ってよく聞くだろ。 オレ様がルガルガンだったらユウリはとっくに食われてるぞ。 」 少しは脅しになっただろうか。 これを機に少しでも警戒してくれたほうが俺としても心配がなくなるのだが……。 「ルガルガンは真昼の姿ですか?たそがれの姿ですか?」 呆気に取られて理解するのに少し時間がかかった。 「真夜中の姿だよ。 」 そう答えるとパァッと顔が明るくなった。 「私真夜中の姿のルガルガン見たことないんです!」 ほんとどこまでも調子の狂わされることを平気で言ってのける。 自分の表情が緩むのを感じた。 すると押さえつけていたユウリの左手が動きたそうにピクッとした。 腑抜けたことを言われて興がそがれたため、これ以上何かして脅かす気もないので左手を解放してあげた。 するとその小さな左手はまっすぐに俺の右の頬を覆った。 「キバナさんの頬っぺたあったかい。 右手は十分あっためてもらったから、今度は左手あっためてもらわないと。 」 そう言ってふわっと笑った。 思わず右手でユウリの前髪をくしゃっと上げ、おでこに軽くキスをした。 「オレ様が狼だったらこれだけじゃ済まないからな。 」 耳元でささやくと、ユウリはおでこを手で押さえて赤面した。 少しだけ勝った気分になってしまった。 これでちょっとは男として意識してくれるようになっただろうか。 ベッドからおり、少ししわになっていた服を直した。 「じゃあ、オレ帰るけど、戸締りちゃんとしろよ?狼が出るかもしれないからな。 」 そう言うと、ベッドからガバッと音を立てて起き上がり、ムッとした表情で俺を睨みつけた。 相変わらず顔は赤いままだった。 「狼なら目の前にいるもん!」 口を尖らせプイッとそっぽを向いた。 その表情はチャンピオンとは思えないほどあどけなさが残っている。

次の