鬼 滅 の 刃 大正 コソコソ 噂 話。 『鬼滅の刃』ノベライズも驚異の1,2位独占、“外伝”が生む次なる作品人気|秋田魁新報電子版

【鬼滅の刃】伊之助の名前の言い間違いがかわいい!覚えないのはわざと?

鬼 滅 の 刃 大正 コソコソ 噂 話

昼下がりの蝶屋敷、義勇はムフフといい気持ちになっていた。 理由は目の前で恋柱と蟲柱が幸せそうに微笑んでいるから。 己の手土産を頬張って。 「ああ〜ここのお饅頭、噂通り美味しい わあ〜!」 「本当ですねえ、ありがとうございます冨岡さん」 蜜璃の食べっぷりは言うまでもなく、しのぶも美味しい美味しいと連呼していて、ああ買って良かったと思う。 任務帰りにフラリと立ち寄った菓子屋が実は知る人ぞ知る名店だったのは嬉しい偶然だ。 日頃世話になっている蝶屋敷に差し入れたら喜ぶだろうか、と珍しいことを思いついて着けば、折りよく治療を受けたばかりの蜜璃がいて、期せずして女柱三人衆のお茶会のようになった。 「はあ、幸せ…。 伊黒さんにも食べてもらいたいなあ。 今日この後買いに行こうかしら」 「いいですねえ」 「午後はわからないが、朝はそんなに混んでなかったぞ」 だから近頃有名な店の品だということは、先ほど蜜璃に聞いて知ったのだ。 今日は出来立てだという饅頭をいくつか買ったが、お品書きを見るにおはぎも売っているようだった。 傷跡をいくつもつけた男の顔が浮かぶ。 ---と、そこで、蜜璃が計ったようにワクワクと義勇の顔を覗き込んできた。 ゴホゴホとむせるが、蜜璃としのぶも「大丈夫?」の声もない。 慌ててお茶を啜ってフウと息をつけば、目の前で蜜璃としのぶが大きな目をさらに大きく爛爛とさせていた。 「…本当、だが」 「きゃあやっぱり!」 「それは任務帰りに?お二人で?」 「いや…休みの重なった日に…。 二人でだが…」 「きゃあ!」とまた蜜璃が高い声を上げる。 しのぶも「まあまあ」と何やら楽しそうで、逆に義勇は嫌な予感がした。 予感というか、明らかに二人は勘違いをしている。 「待て。 二人が思っているようなものとは違うぞ」 「ではなぜ? 休みにお食事に行くほど、失礼ながら仲が良くはないでしょう?」 「詫びに、と。 それで奢ってもらった」 「…詫び?」 「ああ。 不死川は律儀なんだ」 「冨岡さん、もうちょっと頑張って説明しましょうか。 ああこれはまた説明が必要になる…と、口下手な義勇は空を仰いだ後、せめて喉を潤そうと再び湯呑みに手をつけた。 「…そんなわけで、好物を奢ってもらった。 それだけだ」 辿々しいながらも、しのぶの引き出しもあってどうにかこうにか事の次第--着替えに手間取っていたら襖を開けられ胸を見られた--を説明し、義勇はフウとため息をついた。 「なるほど…先日の腕を怪我された任務でのことでしたか。 女性のいる部屋を声かけなく開けるなどよくありませんね。 そもそも形などどうでもいい。 この身は男同然。 今回は事故だったが、この先誰かに見せることなどないだろう。 そうポツポツとこぼすと、蜜璃がとても悲しそうな顔をした。 あ、と思う。 蜜璃を悪く言いたいわけではない。 「すまない。 甘露寺が添い遂げる殿方を見つけようとしてることを、悪く思ってるわけじゃない。 単純に私は女としての生をもう捨てているだけの話だ」 「そんな。 この先のことを決めつけるのは良くないと思うの…」 決めつけているわけではない。 けれど、自分に蜜璃が抱いているようなふわふわ可愛らしい感情に縁があるとは、どうにも思えなかった。 女であることは煩わしいばかりだ。 女だから、あの鬼にも、嬲られた。 思い出してゾクっと悪寒が走る。 気取られないよう少しだけ首を振ると、今度はしのぶが至極真面目な顔をして口を開いた。 「冨岡さん。 私も正直、女としての幸せを得ることはないだろうと思っています。 けれど、せっかくきっかけが舞い降りたならば、それを無視することはないのではないでしょうか?」 「…きっかけ?」 「不死川さんは確かに律儀な方ですが、単純にお詫びならば何か差し入れをするにとどめそうですが? まして、休みの日にわざわざ」 「私もそう思うわ!」 「…さすがにそれは、曲解が過ぎないか?」 好物を聞かれ、鮭大根と答えた。 差し入れるには不向きなものだろう。 これがそれこそ饅頭とか答えていたら、差し入れで済んだのではないだろうか。 「二人だって知ってるだろう? 私は不死川に嫌われている」 「それは…まあ、そうですが。 それこそ何がきっかけで人の心は変わるか分かりませんよ」 「義勇ちゃんを女の子として意識したのかも!」 なぜ、とは蜜璃は言わないが、胸を見て、だろうか。 確かにバッチリ見られはしたが。 予想だにせず驚いたのだろうが、数秒凝視されてさすがに恥ずかしかった。 こんなゴツく傷だらけの身体、見て面白いものでもないだろうに。 それなのに彼は確かに女扱いして気遣ってくれた。 『…てめェは、女だ』 あの男にしては珍しく掠れたような声だった。 あちこち破れた着物を覆うようにかぶせてくれた白の羽織が、暖かで、大きかったことも思い出す。 ほんのわずかにポウと義勇の頰が染まる。 それを見逃さなかった蜜璃としのぶは再度目を爛々とさせて追求の口を開いた。 「三日前のお食事はどうだったの? 楽しかった?」 「ちゃんと会話はできましたか? 日頃から言っていますが、話したいことを端折っちゃ駄目ですよ?」 矢継ぎ早に問われ、困惑する。 ええと食事はどうだった。 どうだった? 三日前を思い返す。 互いの任務の隙間の日、昼餉とも夕餉ともつかぬ中途半端な時間ではあったが、義勇行きつけの小料理屋に実弥と二人で行った。 そこの鮭大根は絶品で、鮭はほろりと口の中でほぐれ、大根からは甘辛い汁がじゅわりと染み出す。 ムフフ、と思わず笑みが零れる傍ら、『…確かにうめェなァこれ』と実弥も呟くのを聴き、義勇にしては大層珍しく心から嬉しくて笑った。 実弥が何やら目を瞠った気がするが、すぐに熱々の炊きたてご飯も出されてそちらに夢中になってしまったのであまり覚えていない。 「ふむふむ、笑ったのですね」 「義勇ちゃん、滅多に見せてくれないけど笑顔がとっても可愛いものね〜! きっと不死川さんは初めて見たわね」 「鮭大根をうまいと言ってくれたから」 「分かりますよ。 好物を肯定されると嬉しいですよね」 うんうん、と二人が何やらいい顔をして頷く。 妙にこそばゆい気持ちになりながら、義勇は次の質問への解を考えていた。 ちゃんと会話はできたか? だったか。 「会話は…できてない、と思う。 お互いの好物の話と、最近の任務の話と…それくらいだ」 それでも彼を怒らせることは…無かったとは言わないが、食事にならないほどの怒りにはならなかったと思う。 実弥が自身の好物を、渋々と、それは渋々と小さな声で「…おはぎ」と言うものだから、可愛くてつい笑ってしまった時がいちばん怒られた。 そうだ、おはぎ。 「おはぎを差し入れしなくては」 「んん? 話が飛びましたね。 なぜおはぎを?不死川さんにですか?」 「ああ、好物らしい」 「それはそれは。 でもなぜ差し入れようと?」 「先ほど話した任務で、私は役立たずだった。 不死川に助けてもらったので、その礼をと約束している」 正確に言うと約束というか押し付けであるが、一方的に奢られたままというのは座りが悪い。 全員食べ尽くしてしまったが、今日の饅頭は美味しかった。 この店のおはぎならば気に入ってくれるだろうか。 「甘露寺、この後店に行くか? 行くなら頼みがある。 おはぎを買って私からの礼だと不死川に渡してもらえないか? 私はこの後任務で」 ちょっと図々しいだろうかと思いつつお願いすれば、蜜璃と、なぜかしのぶも眉を寄せていた。 しのぶはハア…と嘆息まで。 「駄目よ!絶対駄目!」 「す、すまない図々しかったな…忘れてくれ…」 「そうじゃなくて〜! そんなの怒ってないわ!義勇ちゃんのお願い事くらいいくらでも聞くけど、でも今回は駄目!」 「なぜ」 「冨岡さん。 お礼なのでしょう? でしたら人任せにせずご自身の手で渡すのが礼儀かと思いますよ?」 「それはそうだが…今夜からの任務はやや遠方で日数がかかりそうなんだ。 遅くなるのも不作法だろう」 「私から渡されるよりはマシよお! ちゃんと義勇ちゃんから渡してあげて!」 ね!と蜜璃が必死な形相で義勇の手を握る。 しのぶもニコリとちょっと怖い感じで笑っていて、二人の圧がすごい。 義勇は頷くほかなく、わかった、と返せば二人はコロッと和やかなものに雰囲気を変えた。 形うんぬんではなく、潰し過ぎも肺が圧迫され苦しくなりますよ。 平常時は問題なくとも、激しい戦闘時に支障をきたす恐れがあります」 「大変!緩めましょ!」 「……………わかった。 けど、加減が…」 それこそ緩め具合に手間取って、実弥に見られる事件が起きたのだ。 潰すだけなら力任せにできるが、戦闘時に揺れず、かつ圧迫し過ぎず…が難しい。 そう呟くと、キランと二人の目が光った気がした。 嫌な予感しかしない。 「大丈夫ですよ」 「お手伝いするわね!」 そうして蝶屋敷の奥の一室、二人のなすがまま胸をさわられ、さらしを巻かれ、なぜだか「おはぎを渡す日はこれを軽くつけていくよう」と頬紅と口紅まで渡されて。 日が暮れて任務に向かう頃にはグッタリした水柱が出来上がっていた。 * 「そんなわけで、おはぎを持ってきた」 「…おォ…。 まあ、入れやァ」 数日後やはり任務帰りにおはぎを買い、風柱邸へ向かった義勇は、ちょっと緊張した面持ちでいた。 なぜか「必ず塗るように」と渡された化粧をうまくできているか自信がない。 さらしも今までより緩めた結果、当然隊服をやや押し上げていて、実弥がチラと胸元に視線をやった気がして恥ずかしくなった。 やっぱり潰したい。 「茶ァ入れるから少し待っとけ」 縁側に通される。 よく晴れた日で、時折吹く風が心地よい。 程なく実弥が二人分のお茶と、小皿を持って戻ってきた。 おはぎは四つ、四種類買った。 こしあん、粒あん、胡桃あん、胡麻あん。 全て実弥へと買ったもので「私はいらないぞ」と言うと、また額をパチンと弾かれた。 「馬ァ鹿、流石に四つは苦しいわ」 「だからってなぜ弾く…」 痛いんだぞ、と睨めば何故か笑われた。 笑うと存外子どもっぽい顔立ちになるのだな、と思う。 「どれもうめェな」 「ここは饅頭も美味しかったんだ」 「食ったことあんのかァ」 「この間、胡蝶と甘露寺と」 「柱三人も暇かよ」 「たまたまだ」 二人といえば、『おはぎを渡してどうだったか、必ず報告に来て下さいね』と言われたことを思い出した。 『私も鴉で呼んでね!』と蜜璃まで念押しして。 何をどう報告する必要があるのだろうと首を傾げるが、とりあえず隣にいる男をジッと見てみる。 グイと一飲みして息をついた後、「なんっだそりゃア!」と湯呑みをダン!と置く音が響いた。 たどたどしく、先日の蝶屋敷でのことを話す。 「省略するなァ!」と何度か怒られつつひと通り話し終わると、実弥はハアアと額に手を当てて深いため息をついていた。 「…不死川」 「んだよォ」 「その、話の流れとはいえ、胸を見たことを話してすまない。 けどわざとではなく事故だとちゃんと説明したつもりだ」 「ああ…そっちは別段構わねェよ。 見ちまったのは事実だしなァ」 では、何を気にしてうなだれているのだろう。 義勇は首を傾げるが、聞いても答えてくれそうにない。 「妙にめかしこんでると思えば、あいつらの差し金だったわけかァ…」 「めかし…? ああ化粧か。 普段しないから変だろう…すまない」 「変だなんて言ってねェよ」 言うと、節ばった指が伸びてきて口元を拭った。 離れていく指先に紅がついていて、おはぎを食べてはみ出たらしいと気恥ずかしくなる。 「たまにはいいんじゃねェの」 「…柄じゃないし、化粧が必要とも思えない」 「たまに、だっつの」 そのたまに、の状況が思いつかない。 例えば、また、隣に座るこの男と茶菓子を食べる時…? 不意に想像して、頭を振った。 今回は礼だ。 今後はこんな機会ないだろう。 「…とりあえず報告なんだが」 想像したことを振り払うように会話を戻す。 「喜んでくれた、で、いいか?」 「……………。 …ああ」 構わねェよ。 そう呟いたのを聴き、ムフフと笑みが溢れてしまう。 「気色悪ィ笑い方すんなァ」とまたも額を弾かれて、「痛い」と睨みつければ、今度は笑いながら髪をクシャクシャと撫でられた。 報告を聞き「たまに」の状況を作ろうと恋柱と蟲柱が動くのは、また別のお話。

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【鬼滅の刃】鬼殺隊・隊士個人調査書 弐【短編集】

鬼 滅 の 刃 大正 コソコソ 噂 話

1巻:炭治郎&禰豆子 2巻:炭治郎&無惨 3巻:炭治郎&我妻善逸 4巻:炭治郎&嘴平伊之助 5巻:富岡義勇 6巻:胡蝶しのぶ 7巻:嘴平伊之助 8巻:煉獄杏寿郎 9巻:宇髄天元 10巻:炭治郎 11巻:禰豆子 12巻:時透無一郎 13巻:不死川玄弥 14巻:甘露寺蜜璃 15巻:悲鳴嶼行冥 16巻:産屋敷夫妻 17巻:不死川実弥 18巻:栗花落カナヲ 19巻:伊黒小芭内 20巻:継国縁壱 このようになっています。 残る巻数は21、22、23の3巻ですが、表紙に登場しているキャラは 各巻とも内容に深く結びついているキャラクター+味方キャラとなっています。 2巻に敵キャラの無惨が登場していますが、おそらく4巻までは表紙のデザインを統一することを決めていなかったのでしょう。 5巻以降は16巻以外は味方キャラが一人のデザインになっています。 無惨以外の鬼が表紙に登場していないので、おそらく21、22、23巻も味方キャラが登場する可能性はかなり高いですね! それをふまえて、残り3巻の表紙を予想してみました。 21巻:珠代&愈史郎、もしくは珠代 22巻:無惨、もしくは愈史郎 23巻:炭治郎&禰豆子、もしくは味方キャラ全員 まず21巻ですが、鬼ではありますが完全に味方キャラとなった珠代&愈史郎が第一予想になっています。 二人は21巻以降かなり活躍しますし、まだ20巻まで一度も表紙に出ていません。 16巻で産屋敷夫妻が一緒に登場していることからも、21巻以降でも二人同時に登場する可能性はじゅうぶんあります。 第二予想としては、珠代一人のみです。 珠代も愈史郎も活躍しますが、どちらかというと珠代のほうが21巻では活躍するので表紙を一人にすることを徹底するなら珠代ではないでしょうか。 そうなると22巻は連動して愈史郎一人という予想です。 次に22巻ですが、最終巻の一つ前ということで無惨を予想しました。 味方キャラ縛りがあってもやはりラスボスですので、特別扱いされてもおかしくないですよね! 最後に23巻ですが、1巻が炭治郎&禰豆子で始まっていますし、最後もこの二人で締めくくると思われます。 やはり物語の中心はこの二人ですので、最有力候補ではないでしょうか? あえて他の予想をするのであれば、味方キャラ全員も考えられます。 さすがにサブキャラの隊士までを狭い表紙に描くことは難しいので、柱+同期+禰豆子あたりが限界でしょう。 人気があっただけに連載終了は少し寂しいですが、短編スピンオフが連載されたり映画の公開があったりと、まだまだ鬼滅の刃は終わりません。 アニメに至ってはまだ序盤が終わったぐらいですので、これからも私たちを楽しませてくれそうですね!.

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昼下がりの蝶屋敷、義勇はムフフといい気持ちになっていた。 理由は目の前で恋柱と蟲柱が幸せそうに微笑んでいるから。 己の手土産を頬張って。 「ああ〜ここのお饅頭、噂通り美味しい わあ〜!」 「本当ですねえ、ありがとうございます冨岡さん」 蜜璃の食べっぷりは言うまでもなく、しのぶも美味しい美味しいと連呼していて、ああ買って良かったと思う。 任務帰りにフラリと立ち寄った菓子屋が実は知る人ぞ知る名店だったのは嬉しい偶然だ。 日頃世話になっている蝶屋敷に差し入れたら喜ぶだろうか、と珍しいことを思いついて着けば、折りよく治療を受けたばかりの蜜璃がいて、期せずして女柱三人衆のお茶会のようになった。 「はあ、幸せ…。 伊黒さんにも食べてもらいたいなあ。 今日この後買いに行こうかしら」 「いいですねえ」 「午後はわからないが、朝はそんなに混んでなかったぞ」 だから近頃有名な店の品だということは、先ほど蜜璃に聞いて知ったのだ。 今日は出来立てだという饅頭をいくつか買ったが、お品書きを見るにおはぎも売っているようだった。 傷跡をいくつもつけた男の顔が浮かぶ。 ---と、そこで、蜜璃が計ったようにワクワクと義勇の顔を覗き込んできた。 ゴホゴホとむせるが、蜜璃としのぶも「大丈夫?」の声もない。 慌ててお茶を啜ってフウと息をつけば、目の前で蜜璃としのぶが大きな目をさらに大きく爛爛とさせていた。 「…本当、だが」 「きゃあやっぱり!」 「それは任務帰りに?お二人で?」 「いや…休みの重なった日に…。 二人でだが…」 「きゃあ!」とまた蜜璃が高い声を上げる。 しのぶも「まあまあ」と何やら楽しそうで、逆に義勇は嫌な予感がした。 予感というか、明らかに二人は勘違いをしている。 「待て。 二人が思っているようなものとは違うぞ」 「ではなぜ? 休みにお食事に行くほど、失礼ながら仲が良くはないでしょう?」 「詫びに、と。 それで奢ってもらった」 「…詫び?」 「ああ。 不死川は律儀なんだ」 「冨岡さん、もうちょっと頑張って説明しましょうか。 ああこれはまた説明が必要になる…と、口下手な義勇は空を仰いだ後、せめて喉を潤そうと再び湯呑みに手をつけた。 「…そんなわけで、好物を奢ってもらった。 それだけだ」 辿々しいながらも、しのぶの引き出しもあってどうにかこうにか事の次第--着替えに手間取っていたら襖を開けられ胸を見られた--を説明し、義勇はフウとため息をついた。 「なるほど…先日の腕を怪我された任務でのことでしたか。 女性のいる部屋を声かけなく開けるなどよくありませんね。 そもそも形などどうでもいい。 この身は男同然。 今回は事故だったが、この先誰かに見せることなどないだろう。 そうポツポツとこぼすと、蜜璃がとても悲しそうな顔をした。 あ、と思う。 蜜璃を悪く言いたいわけではない。 「すまない。 甘露寺が添い遂げる殿方を見つけようとしてることを、悪く思ってるわけじゃない。 単純に私は女としての生をもう捨てているだけの話だ」 「そんな。 この先のことを決めつけるのは良くないと思うの…」 決めつけているわけではない。 けれど、自分に蜜璃が抱いているようなふわふわ可愛らしい感情に縁があるとは、どうにも思えなかった。 女であることは煩わしいばかりだ。 女だから、あの鬼にも、嬲られた。 思い出してゾクっと悪寒が走る。 気取られないよう少しだけ首を振ると、今度はしのぶが至極真面目な顔をして口を開いた。 「冨岡さん。 私も正直、女としての幸せを得ることはないだろうと思っています。 けれど、せっかくきっかけが舞い降りたならば、それを無視することはないのではないでしょうか?」 「…きっかけ?」 「不死川さんは確かに律儀な方ですが、単純にお詫びならば何か差し入れをするにとどめそうですが? まして、休みの日にわざわざ」 「私もそう思うわ!」 「…さすがにそれは、曲解が過ぎないか?」 好物を聞かれ、鮭大根と答えた。 差し入れるには不向きなものだろう。 これがそれこそ饅頭とか答えていたら、差し入れで済んだのではないだろうか。 「二人だって知ってるだろう? 私は不死川に嫌われている」 「それは…まあ、そうですが。 それこそ何がきっかけで人の心は変わるか分かりませんよ」 「義勇ちゃんを女の子として意識したのかも!」 なぜ、とは蜜璃は言わないが、胸を見て、だろうか。 確かにバッチリ見られはしたが。 予想だにせず驚いたのだろうが、数秒凝視されてさすがに恥ずかしかった。 こんなゴツく傷だらけの身体、見て面白いものでもないだろうに。 それなのに彼は確かに女扱いして気遣ってくれた。 『…てめェは、女だ』 あの男にしては珍しく掠れたような声だった。 あちこち破れた着物を覆うようにかぶせてくれた白の羽織が、暖かで、大きかったことも思い出す。 ほんのわずかにポウと義勇の頰が染まる。 それを見逃さなかった蜜璃としのぶは再度目を爛々とさせて追求の口を開いた。 「三日前のお食事はどうだったの? 楽しかった?」 「ちゃんと会話はできましたか? 日頃から言っていますが、話したいことを端折っちゃ駄目ですよ?」 矢継ぎ早に問われ、困惑する。 ええと食事はどうだった。 どうだった? 三日前を思い返す。 互いの任務の隙間の日、昼餉とも夕餉ともつかぬ中途半端な時間ではあったが、義勇行きつけの小料理屋に実弥と二人で行った。 そこの鮭大根は絶品で、鮭はほろりと口の中でほぐれ、大根からは甘辛い汁がじゅわりと染み出す。 ムフフ、と思わず笑みが零れる傍ら、『…確かにうめェなァこれ』と実弥も呟くのを聴き、義勇にしては大層珍しく心から嬉しくて笑った。 実弥が何やら目を瞠った気がするが、すぐに熱々の炊きたてご飯も出されてそちらに夢中になってしまったのであまり覚えていない。 「ふむふむ、笑ったのですね」 「義勇ちゃん、滅多に見せてくれないけど笑顔がとっても可愛いものね〜! きっと不死川さんは初めて見たわね」 「鮭大根をうまいと言ってくれたから」 「分かりますよ。 好物を肯定されると嬉しいですよね」 うんうん、と二人が何やらいい顔をして頷く。 妙にこそばゆい気持ちになりながら、義勇は次の質問への解を考えていた。 ちゃんと会話はできたか? だったか。 「会話は…できてない、と思う。 お互いの好物の話と、最近の任務の話と…それくらいだ」 それでも彼を怒らせることは…無かったとは言わないが、食事にならないほどの怒りにはならなかったと思う。 実弥が自身の好物を、渋々と、それは渋々と小さな声で「…おはぎ」と言うものだから、可愛くてつい笑ってしまった時がいちばん怒られた。 そうだ、おはぎ。 「おはぎを差し入れしなくては」 「んん? 話が飛びましたね。 なぜおはぎを?不死川さんにですか?」 「ああ、好物らしい」 「それはそれは。 でもなぜ差し入れようと?」 「先ほど話した任務で、私は役立たずだった。 不死川に助けてもらったので、その礼をと約束している」 正確に言うと約束というか押し付けであるが、一方的に奢られたままというのは座りが悪い。 全員食べ尽くしてしまったが、今日の饅頭は美味しかった。 この店のおはぎならば気に入ってくれるだろうか。 「甘露寺、この後店に行くか? 行くなら頼みがある。 おはぎを買って私からの礼だと不死川に渡してもらえないか? 私はこの後任務で」 ちょっと図々しいだろうかと思いつつお願いすれば、蜜璃と、なぜかしのぶも眉を寄せていた。 しのぶはハア…と嘆息まで。 「駄目よ!絶対駄目!」 「す、すまない図々しかったな…忘れてくれ…」 「そうじゃなくて〜! そんなの怒ってないわ!義勇ちゃんのお願い事くらいいくらでも聞くけど、でも今回は駄目!」 「なぜ」 「冨岡さん。 お礼なのでしょう? でしたら人任せにせずご自身の手で渡すのが礼儀かと思いますよ?」 「それはそうだが…今夜からの任務はやや遠方で日数がかかりそうなんだ。 遅くなるのも不作法だろう」 「私から渡されるよりはマシよお! ちゃんと義勇ちゃんから渡してあげて!」 ね!と蜜璃が必死な形相で義勇の手を握る。 しのぶもニコリとちょっと怖い感じで笑っていて、二人の圧がすごい。 義勇は頷くほかなく、わかった、と返せば二人はコロッと和やかなものに雰囲気を変えた。 形うんぬんではなく、潰し過ぎも肺が圧迫され苦しくなりますよ。 平常時は問題なくとも、激しい戦闘時に支障をきたす恐れがあります」 「大変!緩めましょ!」 「……………わかった。 けど、加減が…」 それこそ緩め具合に手間取って、実弥に見られる事件が起きたのだ。 潰すだけなら力任せにできるが、戦闘時に揺れず、かつ圧迫し過ぎず…が難しい。 そう呟くと、キランと二人の目が光った気がした。 嫌な予感しかしない。 「大丈夫ですよ」 「お手伝いするわね!」 そうして蝶屋敷の奥の一室、二人のなすがまま胸をさわられ、さらしを巻かれ、なぜだか「おはぎを渡す日はこれを軽くつけていくよう」と頬紅と口紅まで渡されて。 日が暮れて任務に向かう頃にはグッタリした水柱が出来上がっていた。 * 「そんなわけで、おはぎを持ってきた」 「…おォ…。 まあ、入れやァ」 数日後やはり任務帰りにおはぎを買い、風柱邸へ向かった義勇は、ちょっと緊張した面持ちでいた。 なぜか「必ず塗るように」と渡された化粧をうまくできているか自信がない。 さらしも今までより緩めた結果、当然隊服をやや押し上げていて、実弥がチラと胸元に視線をやった気がして恥ずかしくなった。 やっぱり潰したい。 「茶ァ入れるから少し待っとけ」 縁側に通される。 よく晴れた日で、時折吹く風が心地よい。 程なく実弥が二人分のお茶と、小皿を持って戻ってきた。 おはぎは四つ、四種類買った。 こしあん、粒あん、胡桃あん、胡麻あん。 全て実弥へと買ったもので「私はいらないぞ」と言うと、また額をパチンと弾かれた。 「馬ァ鹿、流石に四つは苦しいわ」 「だからってなぜ弾く…」 痛いんだぞ、と睨めば何故か笑われた。 笑うと存外子どもっぽい顔立ちになるのだな、と思う。 「どれもうめェな」 「ここは饅頭も美味しかったんだ」 「食ったことあんのかァ」 「この間、胡蝶と甘露寺と」 「柱三人も暇かよ」 「たまたまだ」 二人といえば、『おはぎを渡してどうだったか、必ず報告に来て下さいね』と言われたことを思い出した。 『私も鴉で呼んでね!』と蜜璃まで念押しして。 何をどう報告する必要があるのだろうと首を傾げるが、とりあえず隣にいる男をジッと見てみる。 グイと一飲みして息をついた後、「なんっだそりゃア!」と湯呑みをダン!と置く音が響いた。 たどたどしく、先日の蝶屋敷でのことを話す。 「省略するなァ!」と何度か怒られつつひと通り話し終わると、実弥はハアアと額に手を当てて深いため息をついていた。 「…不死川」 「んだよォ」 「その、話の流れとはいえ、胸を見たことを話してすまない。 けどわざとではなく事故だとちゃんと説明したつもりだ」 「ああ…そっちは別段構わねェよ。 見ちまったのは事実だしなァ」 では、何を気にしてうなだれているのだろう。 義勇は首を傾げるが、聞いても答えてくれそうにない。 「妙にめかしこんでると思えば、あいつらの差し金だったわけかァ…」 「めかし…? ああ化粧か。 普段しないから変だろう…すまない」 「変だなんて言ってねェよ」 言うと、節ばった指が伸びてきて口元を拭った。 離れていく指先に紅がついていて、おはぎを食べてはみ出たらしいと気恥ずかしくなる。 「たまにはいいんじゃねェの」 「…柄じゃないし、化粧が必要とも思えない」 「たまに、だっつの」 そのたまに、の状況が思いつかない。 例えば、また、隣に座るこの男と茶菓子を食べる時…? 不意に想像して、頭を振った。 今回は礼だ。 今後はこんな機会ないだろう。 「…とりあえず報告なんだが」 想像したことを振り払うように会話を戻す。 「喜んでくれた、で、いいか?」 「……………。 …ああ」 構わねェよ。 そう呟いたのを聴き、ムフフと笑みが溢れてしまう。 「気色悪ィ笑い方すんなァ」とまたも額を弾かれて、「痛い」と睨みつければ、今度は笑いながら髪をクシャクシャと撫でられた。 報告を聞き「たまに」の状況を作ろうと恋柱と蟲柱が動くのは、また別のお話。

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