シネマ スケープ。 前信介

前信介

シネマ スケープ

解説 2017年・第74回ベネチア国際映画祭で脚本賞、同年のトロント国際映画祭でも最高賞にあたる観客賞を受賞するなど各国で高い評価を獲得し、第90回アカデミー賞では主演女優賞、助演男優賞の2部門を受賞したドラマ。 米ミズーリ州の片田舎の町で、何者かに娘を殺された主婦のミルドレッドが、犯人を逮捕できない警察に業を煮やし、解決しない事件への抗議のために町はずれに巨大な3枚の広告看板を設置する。 それを快く思わない警察や住民とミルドレッドの間には埋まらない溝が生まれ、いさかいが絶えなくなる。 そして事態は思わぬ方向へと転がっていく。 娘のために孤独に奮闘する母親ミルドレッドをフランシス・マクドーマンドが熱演し、自身2度目のアカデミー主演女優賞を受賞。 警察署長役のウッディ・ハレルソンと差別主義者の警察官役のサム・ロックウェルがともにアカデミー助演男優賞候補となり、ロックウェルが受賞を果たした。 監督は「セブン・サイコパス」「ヒットマンズ・レクイエム」のマーティン・マクドナー。 2017年製作/116分/G/イギリス 原題:Three Billboards Outside Ebbing, Missouri 配給:20世紀フォックス映画 スタッフ・キャスト ネタバレ! クリックして本文を読む 本作は、(2018年の)第90回アカデミー賞で作品賞を「シェイプ・オブ・ウォーター」と競っていた名作で、作品賞、脚本賞など7つノミネートされ、結果は(「ファーゴ」に続き)フランシス・マクドーマンドが主演女優賞、(遅咲きの)サム・ロックウェルが助演男優賞を受賞しました。 本作の面白さは、何と言っても脚本だと思います。 たったの3つの看板を使って、よくここまで緻密で深い話に持っていくことができたと感心します。 会話も(良い意味で)高度で、例えば聖職者らが注意しても、辛辣でロジカルな皮肉で返していくといった攻防も非常に痛快です。 何度も繰り返して見たい「映画史に残る名作」であることは間違いないでしょう。 (ちなみに、私は作品賞を受賞した「シェイプ・オブ・ウォーター」よりも本作の方が好きでした) ただ、脚本の進行が高度であるからこそ、こちらも注意深く見てしまうからか、どうしても私には解らない大きな2つの「疑問」が存在しています。 そこが少しだけ引っかかるため、評価は4. 5としています。 【以下、ネタバレありで書きます】 1つ目の疑問は、悪徳警官を演じるサム・ロックウェルが広告マンを2階の窓から投げ飛ばし、ボコボコにした件ですが、いくらミズーリ州の架空の田舎町と言っても、さすがにこれは「訴訟大国アメリカ」なのでアウトでは? 時代設定なのかと思ってみても、携帯電話は登場しますし、新署長の会話から2000年代ではあるので、訴訟は日常的な時代です。 しかも他のシーンでは法律案件の会話も複数あるので、ここは論理矛盾が出ないような「何か」が欲しかった気がしています。 2つ目の疑問は、警察署放火の件ですが、「人がいるかの確認」のために電話をしていますが、これは放火の決定的な証拠になってしまうのでは? そもそもDNA鑑定が当たり前にある時代で、不自然な電話の通話記録の確認など当然のはずで、しかも手袋をせずに電話をしているので指紋の証拠としても厳しい気がします。 この2点は試写の段階から「解けない謎」でしたが、やはり現時点でも変わらない結果でした。 実は、本作のマーティン・マクドナー監督は、これだけの名作なのに、なぜかアカデミー賞で監督賞にノミネートされなかったのですが、私には理解不能で、せいぜいこの2つの「疑問」くらいしか思い浮かびません。 本作で好きになったマーティン・マクドナー監督の次回作もオリジナルでサーチライト・ピクチャーズ作品のようなので、またアカデミー賞級の作品になると思われ今から期待してしまいます。 18年の最重要作と言っても過言ではない。 これは片田舎で起こった小さな物語ながら、おそらくこの舞台には世界中のあらゆる人々の生き様が集約されているのだろう。 だから我々はこの数少ない主人公たち(ビルボードの数と同じく3人)がいかに無茶苦茶をやって、己の行為について後から悔いたりしたところで、単純に糾弾したり同情することなどできやしない。 3看板によって突きつけられる言葉は「汝は天に顔向けできる人間か?」というあらゆる人間に発せられた問いかけでもある。 誰もが全うな人間でありたいと願いながら、そうであることは難しい。 全うに生きているつもりでも、気付かぬ内に道を踏み外していることもある。 だが人は俯瞰したり意識することで変われる。 正反対の人と繋がることだってできる。 そんな普遍的なテーマへいざなうにあたり、これほど複雑怪奇なストーリーテラーぶりで我々をとことん翻弄したマクドナー監督に心から脱帽である。 良い意味で言うのだが、悪い冗談のような作品だ。 登場人物のやることなすこと、ほとんどすべてが上手くいかず、想定外の帰結を呼ぶ。 結末もあさっての方向に着地していると言って良い。 そんなことをしてなんになるのだというような感じだ。 にもかかわらず、救いを感じさせてしまう。 確かに人間はそういうものだ、という深い納得がある。 フランシス・マクドーマンドが主演だからというのもあるが、コーエン兄弟の『ファーゴ』を思い出した。 狂言誘拐で少し身代金を取ってやろうと思いきや、やることなすこと裏目に出て、とんでもない殺人事件に発展していく。 アメリカの田舎の閉塞的な人間関係の描写を本質と観てもよいが、それだけではない凄みがある。 主人公が見かけたシカはなんだったのか、自殺する警察署長の傍らで悠然としている2頭の馬など、異様に人知を超えた何かを感じさせる。 人の努力とは別のところで運命は決定づけられているような、そんな奇妙な白日夢を観た気分だ。 カールした髪を少しだけ後ろで束ねて、そこにバンダナを締め、ツナギで武装した怒り心頭の母親、ミルドレッドが、ギターの爪弾きに乗って、レイプされ、焼き殺された娘の敵を討ちに行く。 さながら、現代のミズーリにカウボーイがワープしてきたかのようではないか!? しかし当然、ここでは善対悪の構図はかつてのように単純ではなく、悪人に見えた人間には情状酌量の余地が大いにあり、さも善人面して登場する人物が巨大悪の手先だったりする。 そんな時代に、ひたすらいがみ合い、傷つけ合うことなど無意味なのだ。 互いに思いやりを持ち、理解する努力を怠らないことこそ、人としての知恵ではないのか? 想定外に次ぐ想定外で観客をとことん混乱させる物語は、最後に心和む着地点を用意して、そこはかとない余韻を残して幕を閉じる。 その余韻はしばらく消えることはない。 オスカー云々に関係なく、今年まず観るべき1作だ。 「デスカムトゥルー」 C IZANAGIGAMES, Inc. All rights reserved. 「ソニック・ザ・ムービー」 C 2020 PARAMOUNT PICTURES AND SEGA OF AMERICA, INC. ALL RIGHTS RESERVED. 「エジソンズ・ゲーム」 C 2018 Lantern Entertainment LLC. All Rights Reserved. 」 C 2019 Sony Pictures Television Inc. and CBS Studios Inc. All Rights Reserved. 「ドクター・ドリトル」 C 2019 Universal Pictures. All Rights Reserved.

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全州国際映画祭 (4-5月)

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CONTENTS• 全州(チョンジュ)映画祭とは? 全州 チョンジュ 国際映画祭は2000年から韓国・全州にて始まった国際映画祭であり、2019年で20回目の開催となります。 全州は 韓国映画発祥の地とも言われており、本映画祭は釜山映画祭、富川映画祭と合わせて 韓国三大映画祭の一つとされています。 その中でも本映画祭は、作家性の強い作品が多く集まるのが特徴としており、 アジアを代表するインディペンデント映画祭としても注目を集めています。 今回『暁闇』が招待されたのはワールドシネマスケープ部門。 『ムーンライト』で知られるバリー・ジェンキンス監督の最新作 『ビール・ストリートの恋人たち』などのメジャー映画が並ぶ中、 インディーズ映画としては異例の選出となりました。 映画祭での上映の様子 若年層を中心に注目された『暁闇』 映画祭には阿部監督のほかにも、キャストの 中尾有伽、 青木柚、 越後はる香、音楽を担当した LOWPOPLTD. が参加し、オープニングを飾るレッドカーペットにも登壇しました。 全州国際映画祭において最大キャパシティを誇るCGV・スクリーン1にて2回の舞台挨拶付き上映が行われましたが、その チケットはオンラインでの発売開始後すぐに即完売となるなど、 本作の現地での注目度がどれほど高かったのかが理解できます。 そして上映に訪れた観客の多くが、 若い客層を中心とする熱心な映画ファンでした。 それに対し、阿部監督は「抱えていると思うし、少なくとも『暁闇』において自分の体験から離れたことは一切描いていない。 むしろあなたと同様、十代の抱える問題を完全にひとつのモチーフとして切り離して描いている作品に出会うと、とても悲しくなる。 」と、 日本の十代が生きている孤独な現実、 それに対する社会の不理解という日本のみならず多くの国々に共通する問題を訴えました。 そのほかにも、キャスト陣へのそれぞれが演じた役柄についての質問や、LOWPOPLTD. の音楽が「逆再生」をベースに作られていることにも言及されるなど、作品の細かい部分まで触れられた鋭い質問が飛び出しました。 【キャスト】 青木柚、中尾有伽、越後はる香、若杉凩、加藤才紀子、小泉紗希、新井秀幸、折笠慎也、卯ノ原圭吾、石本径代、芦原健介、水橋研二 【作品概要】 それぞれに孤独を抱えながら日々をやり過ごしていた少年少女たちが、インターネット上で見つけたある音楽をきっかけに出会い、友情でも恋愛でもない、互いのを孤独を共有し合うとする姿を描いた青春ドラマ。 本作が初監督作となる阿部はりか監督が、ネット上においてカルト的な人気を誇るバンド「LOWPOPLTD. 」の楽曲からインスパイアを受けて制作した作品です。 自身が通う中学校で教師を務めている父親(水橋研二)が生徒たちからいじめを受けていても興味なさげに眺め、恋人であるトモコ(若杉凩)との間にもどこか距離があるような状況でした。 コウとは別の中学校に通うユウカ(中尾有伽)は、学校が終わるといつも街を徘徊しては、初対面の男たちと束の間の関係を持っていました。 ユウカの同級生サキ(越後はる香)は、不器用にすれ違う両親の狭間で行き場のない悲しさを抱えていました。 そんな3人は、インターネット上で公開されていたある音楽をきっかけに、導かれるように出会いを果たしますが……。 まとめ 全州国際映画祭ワールドシネマスケープ部門でのワールド・プレミア上映も、舞台挨拶やサイン会も含め 大好評によって幕を閉じた映画『暁闇』。 日本の十代が抱える孤独と現実を描いた本作。 そして、映画『暁闇』の舞台と同じく日本で暮らす十代が本作を観た時、どのような反響を得られるのでしょうか。 そのような視点からも、 今後の日本での公開が非常に待ち遠しい作品です。 映画『暁闇』は2019年7月よりユーロスペースほか全国順次ロードショー!.

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【大注目】シネマ級サウンドを生み出すサウンドバー「Sonos Arc(ソノスアーク)」が魅力的すぎる!

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