枕草子 すさまじきもの。 枕草子(25) すさまじきもの(二五段)その1

枕草子の現代語訳を探しています

枕草子 すさまじきもの

昼ほゆる犬。 春の 網 あ 代 じろ。 三、四月の紅梅の 衣 きぬ。 牛死にたる牛飼ひ。 興ざめなもの。 昼間に吠える犬。 春の網代。 三、四月の紅梅 襲 がさね の衣。 牛が死んでしまった牛飼い。 児 ちご 亡くなりたる 産 うぶ 屋 や。 人おこさぬ 炭 す 櫃 びつ 、 地 じ 火 か 炉 ろ。 博 はか 士 せ のうち続き 女 おんな 子 ご 産 む ませたる。 赤ん坊が死んでしまった産屋。 火をおこしていない角火鉢や、いろり。 博士(=跡継ぎが男に限られている教官)が連続して女の子を産ませた場合。 方 かた 違 たが へに行きたるに、あるじせぬ所。 まいて 節 せち 分 ぶん などはいとすさまじ。 方違えに行ったのに、もてなしをしない所。 まして節分(の方違えなどの時に、もてなさないの)は、とても興ざめだ。 人の国よりおこせたる文の、物なき。 地方からよこした手紙で、贈り物を添えていないもの。 京のをもさこそ思ふらめ。 されどそれはゆかしきことどもをも、書き集め、 京からの(手紙の場合)もそう思っているだろう。 しかしそれは(地方の人が)知りたそうなことなどをも書き集め、 世にあることなどをも聞けば、いとよし。 世の中の出来事などをも知ることができるので、(京からの手紙の場合は)贈り物がなくてもすばらしいのだ。 人のもとにわざと清げに書きて 遣 や り つる文の、 人のところに特別にきちんと書いて送った手紙で、 返り言今はもて 来 き ぬらむかし、あやしう遅き、と待つほどに、 きっと返事をもう持ってきているだろうよ、妙に遅いことだ、と待つうちに、 ありつる文、立て文をも結びたるをも、いと汚げにとりなし、 先程の手紙を、それが(正式な)立て文でも(略式の)結び文にしろ、たいそう汚げに扱い、 ふくだめて、上に引きたりつる墨など消えて、 けばだたせ、(封の印である)上に引いていた墨なども消えて、 「おはしまさざりけり。 」もしは、「御物忌みとて取り入れず。 」 「いらっしゃいませんでした。 」もしくは、「御物忌みだと言って受け取らない。 」 と言ひて持て帰りたる、いとわびしく、すさまじ。 と言って持ち帰ったのは、とても情けなく興ざめである。 ここでは護法童子のこと。 蝉 せみ の声しぼり出だして読み 居 ゐ たれど、 蝉のような声をしぼり出して(お経を)読んでいたが、 いささかさりげもなく、 護 ご 法 ほう もつかねば、 少しも(物の怪が)退散しそうな気配もなく、護法童子も(よりましに)つかないので、 集り居念じたるに、男も女もあやしと思ふに、時のかはるまで読み困じて、 (家の者たちが)集まり座ってお祈りしていたが、男も女も妙だなと思っていると、(修験者は)時が変わるまで読み疲れて、 「さらにつかず。 立ちね」とて、数珠取り返して、 「まったく(護法童子がよりましに)つかない。 立ちなさい。 」と言って、数珠を取り返して、 「あな、いと 験 げん なしや」とうち言ひて、 額 ぬか より 上 かみ ざまにさくり上げ、あくびおのれよりうちして、寄り臥しぬる。 「ああ、まったく効き目がない」とつぶやいて、額から上の方に髪をかき上げ、(こともあろうに)あくびを自分から先にして、寄りかかって寝てしまったこと(は興ざめだ)。 いみじうねぶたしと思ふに、いとしもおぼえぬ人の、 ひどく眠たいと思っている時に、それほどにも思っていない人が、 押し起こして、せめてもの言ふこそ、いみじうすさまじけれ。 揺り起こして、無理矢理に話しかけてくるのは、非常に興ざめだ。 (3) 除 じ 目 もく に 司 つかさ 得ぬ人の家。 今年は必ずと聞きて、はやうありし者どもの、ほかほかなりつる、 除目(=官吏任命の儀式)に官職を得られなかった人の家(は興ざめである)。 今年は必ず(任官される)と聞いて、以前に仕えていた者たちで、離れ離れになっていた者たちや、 田舎だちたる所に住む者どもなど、皆集まり来て、出で入る車の 轅 ながえ も 隙 ひま なく見え、 田舎じみた所に住む者たちが、みな集まってきて、出入りする牛車の轅も絶え間なく見え、 もの 詣 もう でする供に、我も我もと参りつかうまつり、物食ひ酒飲み、ののしり合へるに、 (主人が任官祈願のために)寺社に参拝するお供に、我も我もと参上し、物を食い酒を飲んで、騒ぎ合っていたが、 果つる 暁 あかつき まで門たたく音もせず、あやしうなど、 耳立てて聞けば、 (任官式の)終わる明け方まで門をたたく音もせず、妙だなと耳をすまして聞くと、 先追ふ声々などして 上 かん 達 だち 部 め など皆出で 給 たま ひぬ。 (貴人の通行のための)先払いする声などがして、(任官式を終えた)上達部たちはみな退出なさってしまった。 もの聞きに、 宵 よい より寒がりわななきをりける 下 げ 衆 す 男 おとこ 、 様子を聞きに、宵から(出かけて)寒がり震えていた使用人の男が、 いともの憂げに歩み来るを見る者どもは、え問ひだにも問はず、 ひどく憂鬱そうに歩いてくるのを見る者たちは、尋ねることさえもできず、 外より来たる者などぞ、「殿は何にかならせ給ひたる。 」など問ふに、 よそから来ている者などが、「ご主人は何におなりになりましたか。 」などと尋ねると、 いらへには「何の 前 ぜん 司 じ にこそは。 」などぞ、必ずいらふる。 返事には「どこそこの国の前の国司です。 」などと、必ず答える。 まことに頼みける者は、いと嘆かしと思へり。 本当に(主人の任官を)あてにしていた者は、たいそう嘆かわしいと思っている。 つとめてになりて、ひまなくをりつる者ども、一人二人すべり出でて去ぬ。 早朝になり、すき間なくいた者たちは、一人二人とこっそり抜け出して帰って行く。 古き者どもの、さもえ行き離るまじきは、来年の国々、手を折りてうち数へなどして、 古くから仕えている者たちで、そのように離れて行くことができそうもない者たちは、来年(国司が交代する予定)の国々を、指を折って数えたりなどして、 揺るぎありきたるも、いとをかしうすさまじげなる。 体を揺すって歩き回っているのも、とても 滑稽 こっけい で興ざめな感じである。

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『枕草子』すさまじきもの 現代語訳 おもしろい よくわかる 古文

枕草子 すさまじきもの

枕草子:すさまじきもの すさまじきもの昼ほゆる犬。 ~) 1 次の単語の読み方を書きなさい イ)網代 ロ)産屋 ハ)炭櫃 ニ)地下炉 2 次の単語の意味を答えなさい イ)すさまじきもの ロ)網代 ハ)方違へ ニ)あるじせぬ 3 昼ほゆる犬。 春の網代。 三、四月の紅梅の衣。 イ)何がすさまじいのか 4 牛死に たる牛飼ひ。 児亡くなり たる産屋。 イ)何がすさまじいのか ロ)傍線部に注意して和訳しなさい 5 人おこさぬ炭櫃、地下炉。 イ)何がすさまじいのか 6 博士のうち続き女子うませ たる イ)なぜ傍線部「たる」と連体形になっているのか ロ)和訳しなさい ハ)何がすさまじいのか 7 方違へに行きたるに、あるじせぬ所。 まいて節分などはすさまじ。 「枕草子」「方丈記」は平安時代の作品であるが(厳密に「方丈記」は平安後期から鎌倉初期にかけてとされる)、 「徒然草」は鎌倉後期から室町初期とされる点は注意しておきたい。

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枕草子『すさまじきもの』現代語訳(1)(2)(3)

枕草子 すさまじきもの

この部分は時節があっていない例を示していますね。 よく教室では、こんな例他にないかな?と問いかけます。 すると生徒は、冬になってもまだ出ている扇風機とか、昼間から酔っ払っている人とか、、、、。 けっこう盛り上がります。 また、当時はだいたい夜に犬は鳴くものとされていたんです。 我が家の飼っているいる犬はいつでも吠えますがね。。。。 ちなみに、網代というのは、冬に魚を捕らえる仕掛けなんです。 三、四月〜の部分は、本来あるべきものがそこにない状態です。 これも例を考えさせると、生徒のいない学校、、お客さんのいない遊園地とか、、、ちょっと怖いですね。 児のいない産屋というのは、当時はいかに出産が命がけであったのか、がわかる例です。 今に比べて医療も進んでいませんからね。 想像しただけで苦しくなります。 次も見てみましょう。 除目に司得ぬ人の家。 今年は必ずと聞きて、はやうありし者どもの、 ほかほかなりつる、 田舎だちたる所に住む者どもなど、みな集まり来て、出で入る車の轅も ひまなく見え、もの詣でする供に、我も我もと参りつかうまつり、もの食ひ、酒飲み、 ののしり合へるに、果つる暁まで門たたく音もせず、あやしうなど、耳立てて聞けば、前駆追ふ声々などして、上達部など、みな出で給ひぬ。 もの聞きに、宵より寒がりわななきをりける下衆男、いともの憂げに歩み来るを、見る者どもは、 え問ひにだにも問はず。 ほかより来たる者などぞ、「殿は、何にかならせ給ひたる。 」など問ふに、 いらへには、「何の前司にこそは。 」などぞ、必ずいらふる。 まことに 頼みける者は、いと嘆かしと思へり。 つとめてになりて、ひまなくをりつる者ども、一人、二人、すべり出でていぬ。 古き者どもの、さもえ行き離るまじきは、来年の国々、手を折りてうち数へなどして、揺るぎありきたるも、 いとほしう、すさまじげなり。 地方官任命の除目のときに官職を得られない人の家。 今年は(任官が)必ず(かなう)と聞いて、以前に仕えていた者たちで、よそに行っていたのや、片田舎に住む連中などが、みな集まって来て、出入りする(訪問客の)のも隙間なく見え、(任官祈願に)寺社に参拝する(当人の)お供に、我も我もと参上してお仕えし、ものを食い、酒を飲み、大騒ぎし合っていたが、(除目の)終わる明け方まで(任官を知らせる使いが)門をたたく音もせず、おかしいななどと、耳をすまして聞くと、先払いの声などが次々にして、(除目に参列した)公卿などが、みな(宮中を)退出しておしまいになった。 情報を聞きに、(前日の)夕方から寒がってふるえ(ながら待っ)ていた下男が、とても大儀そうに歩いて来るのを、見る連中は、とても(結果を)尋ねることさえもできない。 よそから訪問した者などが、「ご主人は、何に任官なさったか。 」などと尋ねると、答えには、「どこそこののに(おなりです)。 」などと、必ず答える。 (主人の任官を)本気で頼りにしていた者は、ひどく嘆かわしいと思っている。 翌朝になって、びっしり集まっていた者たちも、一人、二人と、(邸を)すべり出て行ってしまう。 古参の連中で、そんなふうによそへ行くこともできそうにない者たちは、来年国司が任官されるはずの国々を、指折り数えなどして、(虚勢を張って)体を揺さぶって歩き回っているさまも、気の毒で、興ざめな感じだ。 ものすごく具体的なイメージが広がる場面です。 期待していたようにはいかなかった例ですね。 除目とは今でいう人事です。 夜行われました。 きっと選ばれるだろうとみんなが集まってきました。 ここで選ばれるかどうかでかなり生活がかかっていたと思われます。 何か良いことがありそうな時には人が集まってきますが、ダメだって判断されると一瞬で人が遠のいていくんです。 何か今とあんまり変わらないような気がしますね。 それでも、昔から仕えていた者はなかなか帰れない。 来年のことを指折り数えることしか、、、、。 かわいそうです。 ひつじ先生から桃尻語訳って面白いよ。 『枕草子』を楽しむ上で欠かせない名著は、橋本治先生の『桃尻語訳』です。 ここでは、除目の部分だけ一部引用します。 スラスラ読めるので、もっと読みたい人は是非読んでみてくださいね。 情報取りで夜の内から寒くて震えてた下ッ端男がすっごくカッタルそうに歩いて来るんだけど、見てる人間達は訊いてみようって気にもなれないの。 本気で期待してたやつは「すっごい残念だなァ」って思うんだけどね。 翌朝になってね、ぎっしりいた人間達が一人二人、そっと抜け出して消えちゃうの。 古くからの人間でそう簡単にいなくなれなかったりするのがさ、来年の国司のポストを指を折って一々数えたりしてのたのた歩いてんのもねェ、可哀想でさ、うんざりの内よねェ。 読んでいただき、ありがとうございました。

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