アルコール 依存 症 脳。 アルコール性認知症とは・他の認知症より厄介な特徴を専門医が解説

依存症が作られる脳のメカニズム

アルコール 依存 症 脳

2017年の12月末頃から、欧米を中心に「ゲーム依存」にまつわる議論が沸騰しているが、今回はICD-11におけるゲーム障害の定義と診断ガイドラインの草稿作成に携わった専門医の視点からこの問題を整理してみたい。 なお、ICD-11での正式名称は「ゲーム障害」だが、用語の浸透度を考慮して、本稿では「ゲーム依存」という呼び名で統一していく。 その後当センターはWHOと共同プロジェクトを組み、ネット依存に関する研究を重ねてきた。 このたびの「ゲーム依存」の疾病化は、これらの活動の1つの成果と言える。 ではなぜ、「ネット依存」ではなく「ゲーム依存」が病気として認定されるのか。 当センターのネット依存外来では、年間延べ1,500名程度の患者を継続的に診察しているが、そのほぼすべての方が、インターネットゲームをきっかけにネット依存を患っている。 その一方、 依存対象がオフラインゲームの患者はほぼ皆無である。 また、ネット依存は、ゲームのほか、SNS、動画といった様々な要因が複雑に絡み合っている。 そのため、ある患者の依存がどの要因に根差したものかを見極めることが、非常に難しい。 しかし、「ゲーム依存」というフレームを用いて検証を行うと、アルコールやギャンブルなど他の依存の典型的な症状や、脳内に生じる反応のパターンと経過が酷似していることが明らかになってきた。 そうしたエビデンス(科学的証拠)の蓄積が、WHOの厳しい審査を通過した決定的な要因になったと言える。 病としての「依存」を正しく理解するためには、「脳のシーソーゲーム」を知ることが近道だ。 通常、私たちの行動は、「本能」を司る大脳辺縁系(以下「辺縁系」)と「理性」を司る前頭前野によってコントロールされている(図1)。 図1:前頭前野と大脳辺縁系 「ゲーム依存なんて大げさだ」と思われる方もいるだろう。 しかし、アルコール依存など他の依存患者と同様の脳の反応をとらえた、ゲーム(ネット)依存患者のMRI画像を見ていただければ、納得してもらえるのではないだろうか。 依存対象を思わせるきっかけ(キュー)を目にしたとき、依存患者の脳は、依存に関連する前頭前野の特定の部位が強く反応する。 その結果、「飲みたい!」「使いたい!」「遊びたい!」という衝動的な欲求が生じるわけである。 図3は、ゲームの画像を見たゲーム依存患者の前頭前野の黄色で示された箇所に強烈な反応が起こっていることを示している。 健常者に同じ画像を見せても、このような反応は見られない。 図3:ゲーム画像を見たときのネット(ゲーム)依存患者の脳の反応 これに加えて、ネット依存の脳の中ではさらに、「前頭前野の機能低下」、「報酬の欠乏」という、2つの特徴的な変化が確認できる。 これらもやはり、アルコール依存やギャンブル依存患者の脳の反応と酷似したものだ。 ゲーム依存が1つの「病気」として成立するのは、このようなエビデンスが数多く集積されているためだ。 逆に、エビデンスによる検証がなされない物事は、「依存」としては成立し得ない。 依存と脳の関係については、拙著(内外出版社、2017年)で詳述している。 ご興味のある方は参照していただきたい。 だが、2018年6月にはWHOから最終版に近い草稿が発表される見込みである。 その後、ICD-11が正式に採択されれば、 WHO加盟国である日本でもゲーム依存 対策のための施策がなされ るであろう。 「ゲーム障害」を病気とするWHOの方針に対しては、2018年1月、国際的なゲーム業界団体であるESA(エンターテインメント・ソフトウェア協会)が反対声明を発表している。 その主張のポイントは2つあった。 「ビデオゲームに中毒作用はないと客観的に証明されている」 「世界中で20億人以上がゲームを楽しんでいる」。 そうしたユーザーを病気とみなせば、「うつ病などの本来の精神疾患がささいなものと位置づけられてしまう」 (より引用) 私は、長年依存のメカニズムを研究してきたが、少なくとも医学的信ぴょう性に足る研究の中に、そのような「客観的な証明」を目にしたことがない。 当センターには、何カ月も前から診察の順番をお待ちいただかざるを得ない、大勢のゲーム依存患者がいる。 彼らの多くはきわめて深刻な症状を抱えている。 もし「中毒作用」がないのなら、私たちはこの状況をどのように理解すればいいのだろうか。 「ゲーム依存など存在しない」と主張される方はぜひ一度、久里浜にお越しいただきたい。 そして、ご自分の目で現実を見ていただきたいと思う。 私はただ、趣味としてゲームを楽しむ「ゲーム愛好家」と、生活に重大な問題を抱えている「ゲーム依存患者」とを区別して考えるべきだ、と主張しているだけである。 ゲームはやれば楽しいものであり、 それまで「NO」と言うつもりはない。 しかし、 ゲームには依存性があることにくれぐれも留意いただきたい。 だが正直なところ、長く患者と向き合ってきた専門医としては、昨今の議論がやや「概念論」に偏っている点に違和感を覚えてもいる。 そのような概念的な議論の中に、私は患者たちの姿や苦しみを見ることができないのだ。 議論が患者不在のものであってはならないだろう。 今後の議論がより良い形で進むよう、当センターは現実の患者に寄り添いながら、蓄積した症例や研究成果を国内外に周知していきたいと考えている。 (内外出版社).

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アルコール性認知症とは

アルコール 依存 症 脳

近年では女性の社会進出の動きが活発化してきています。 そのため、一昔前に比べて 女性も外でお酒を飲む機会が増えているようです。 仕事帰りに一杯飲んで帰る、なんて方も多いのではないでしょうか? また、女子会等で家飲みの女性をターゲットにしたお酒も数多く販売されています。 皆さんご存知の通り、昔から 「酒は百薬の長」と呼ばれ、適量の飲酒で健康にも良いです。 他にもストレス発散や安眠効果も期待出来ます。 しかし、ついつい深酒をしてしまい翌日に酷い二日酔いになってしまう人も多いようです。 そして、そんな生活を繰り返していると自覚がないまま アルコール依存症を発症してしまう事があるのです。 ここではアルコール依存症になってしまう原因や、アルコール依存症が引き起こす恐ろしい症状などをご説明します。 アルコール依存症を発症させてしまう原因 少量のお酒はストレスを緩和し、リラックス効果を与えてくれます。 しかし、少量で留める事が出来ず、毎日大量にお酒を飲み続けるとアルコール依存症を発症してしまう可能性が高くなります。 アルコールを長期間に渡って大量に摂取すると、 生理機能に変化が起こります。 この変化とはアルコール摂取時に感じられる満足度の事です。 長期間に渡り大量のアルコールを摂取し続ける事で生理機能に異常が起こり、以前までの飲酒量では 満足が出来なくなってしまいます。 その結果、満足感を得ようとしてアルコールを摂取する事が習慣化してしまい、アルコールの摂取量が日に日に増えてしまうのです。 そして、アルコールの摂取を中断すると不眠や手のしびれなどの 禁断症状が現れるようになってしまいます。 こうなるともうアルコールが手放す事が出来なくなり、アルコール依存症と診断されてしまいます。 他にも飲酒量が増えてしまう原因には以下のようなものがあります。 アルコールが原因で脳が萎縮する!アルコールの影響は子どもにも現れる。 アルコールの過剰摂取が続くと脳に異常が現れる場合があります。 それは 脳が萎縮してしまう症状です。 飲み過ぎた時や二日酔いの時に脳に しびれの様な症状を感じた事は無いでしょうか? アルコールが原因で小脳が萎縮する症状の一つに、 アルコール性小脳失調症を発症する場合があります。 アルコール性小脳失調症を発症すると歩行に支障が出るようになります。 この症状を発症してしまうと、転倒や転落などによる外傷を誘発しやすくなります。 また、長期に渡る過剰な飲酒は 大脳も萎縮させてしまいます。 ほとんど飲酒をしない人に比べて、大量に飲酒する事が習慣になっている人の脳には 約1~2割程度の脳の萎縮が見られたというデータもあります。 大脳が萎縮してしまうと認知症やうつ病を発症するリスクも高まります。 また、大脳の萎縮により、認知症やうつ病のリスク以外にも生殖系の機能にも障害を及ぼす危険もあります。 アルコールは脳以外にも様々な弊害を起こします。 そして、特に注意が必要なのは 妊娠中のアルコールの摂取です。 妊娠中にアルコールを摂取する事で、子どもに発症する可能性がある症状には以下の様なものがあります。 アルコールで認知症?アルコールが原因で認知症を発症する! 飲酒が原因で発症すると考えられる認知症を アルコール性認知症と呼びます。 お酒を長期間大量に摂取し続けると脳梗塞などの脳血管障害や、ビタミンB1が不足する事で栄養障害を引き起こします。 そして、認知症の症状を発症してしまう事もあるのです。 高齢者施設の入居者の方で認知症を発症している人の3割は、 長期間大量の飲酒をした事が原因で認知症を発症したというデータがあります。 更に高齢者男性の中でも過去5年間に大量に飲酒した経験がある人は、経験のない人に比べ 5倍近い確立で認知症を発症する危険があることが分かっています。 高齢者の数年に渡る大量飲酒は認知症を発症してしまう大きな要因となっています。 しかし、自分は若いからといって安心するのは危険です。 アルコールによって脳に異常が起こるのは 高齢者に限った話ではありません。 若い世代でも長期間大量に飲酒を続ければ 脳に記憶障害が起こる可能性があります。 アルコール認知症の症状は物忘れや、周囲の状況が理解できなくなるなどがあります。 また、記憶が曖昧になり、適当に話を取り作ったりするなども症状として報告されています。 しかし、通常の認知症に比べて、アルコール性認知症の症状は 改善が期待出来ます。 改善の方法は 断酒、つまりお酒を止める事です。 長期間に渡って断酒する事で記憶障害は改善し、認知機能は正常に近い状態へ戻ることがあります。 原因が明確なため予防する事も難しくはありません。 本人の気持ち次第では症状の改善も予防も可能なのです。 とは言え仕事のやプライベートの付き合いで、飲酒が必要な場面も多いと思います。 また、急な禁酒ではストレスも溜まりやすいものです。 ですので、可能な限り日々のアルコール摂取量を抑え、 飲酒以外のストレス発散方法を見つけるようにしましょう。

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アルコール依存症とは?初期症状、進行プロセス、脳への影響、治療方法・・・

アルコール 依存 症 脳

アルコール依存症は、飲酒の制御困難を本質的部分とする。 身体面への影響、抑うつや自殺リスクを上げるなどの精神面への影響、家族関係など周囲の人々への影響、飲酒運転等の社会への影響など、多岐にわたる問題に繋がる。 診断はICD-10またはDSM-5にてなされる。 DSM-5では「アルコール依存症」という分類はなくなり、基準となる症状の項目数により「アルコール使用障害」の診断の中で重症度を判定する仕組みとなっている。 アルコール依存症の成因については、遺伝要因と環境要因の相互作用が考えられ、アルコール依存症の中間表現型を規定する遺伝子が検索されている。 また、脳内報酬系等のアロステリックな変化が、物質使用障害における使用制御の困難を生み出す基盤と考えられている。 治療は断酒を目標とした集団療法や様々な個人療法が認められているが、一方であくまで断酒を最終目標としながらも治療への参加を促すため、減酒を当初の目標とすることもある。 物質依存、概念の歴史 を生じるのうち、最も古くから多くの人に親しまれているのは飲料であろう。 アルコールなどの発酵性飲料の効果の発見はおそらく数千年前にまでさかのぼる。 古代やなどのの時代から酩酊や暴飲について述べられた文章が残されており、アルコール者も古代から相当数存在していたと推測される。 古代時代にも「自治市の要職就任の日も酔ったままであった」や「どんな場所でも飲むことをやめない人がいる」など 、現在でいうアルコール依存症を推察させるような記録がある。 古代には、主に、などののみしか普及しておらず、そのアルコール濃度の上限は約十数%程度であった。 しかし、中性〜近代にかけて諸国を中心に、よりアルコール濃度が高く携帯性、保存性の優れるや・などのが普及すると、・依存がさらに社会問題化してくるようになった。 現在の物質依存に相当する医学用語は、1820年頃からに(中毒)が用いられるようになり、その後やアルコールにも用いられるようになった。 1880年頃からhabit(習慣)、〜ism(症)が、1920年頃から()へと変遷していった。 世界的な診断基準としては、1957年には(World Health Organization: WHO)は、addiction(嗜癖)と()を学術用語として定義した。 Addictionは「著明な」「薬物摂取の渇望」「大きな社会的弊害」の3条件を満たす薬物の使用とされ、habituationはこれより程度の軽い薬物の習慣的使用とされた。 しかし、身体依存がなくともにより薬物摂取への欲求、渇望が起こりうることが判明し、1964年にWHOによってそれまでのaddictionやhabituationに代わって、dependence(依存)の用語が提唱され、現在に至る。 症状 アルコールは、、、、、にかかわる器官のほぼ全てに影響を与える。 そのため、飲酒の制御困難による大量飲酒は、様々な機能障害を起こす。 WHOによれば、アルコールは60以上もの疾患の原因になると言われている。 代表的なものを挙げると、、、、、、、、、など多くの臓器に渡ってその影響が出る。 以上のような身体面への影響だけではない。 以下に精神面への影響について述べる。 健常者に対する飲酒実験によると、10名の健常者を対象に、2時間ごとに飲酒を行う(24時間で最大25ドリンクまでの上限)実験を連日続けた結果、全員がを認め、4名が最初の1週間でを認めたため実験が中止になり、飲酒を中止したところ、抑うつ症状は改善したとの報告がある。 したがって大量飲酒は一過性の抑うつ症状を引き起こすことがあり、連続飲酒に陥っているアルコール依存症者は抑うつ症状を伴うことがしばしばある。 またアルコール依存症の既往がある者では、ない者に比べて、を発症する危険性は4倍高いとする報告があり 、アルコール依存症は、将来の発症リスクに関連する可能性がある。 アルコール依存症がやのリスク因子であることも多くの研究から確認されている。 アルコール依存症、、で自殺の生涯リスクを比較した研究によるとアルコール依存症で7%、気分障害で6%、で4%と推計されており、アルコール依存症は気分障害より自殺のリスクが高いとされる。 また、入院治療を受けたアルコール依存症の国内調査では、アルコール依存症群は一般人口に比べて男性で約9倍、女性で35倍高い自殺の危険があるという研究結果がある。 周囲の人々に与える影響として、繰り返される酩酊状態はや、あるいはの契機となる。 女性のアルコール依存症者は、本人を飲酒させまいとする家族から暴力を振るわれやすく、暴力被害者の立場になることもある。 また、アルコール依存症者の振る舞う行動に他の家族が振り回され、家族は常に依存症者に対して監視の目を光らせざるを得なくなり、家族関係の変化が起こってくる。 このようにして、アルコール依存症は「機能不全家族」と呼ばれる、常に家庭内に対立の空気が流れる家庭環境の原因となり得る。 さらに、アルコールによる社会的な影響も無視できない。 がその一つである。 飲酒運転とアルコール依存症の関連は国内外の多くの研究で指摘されている。 医療と警察が協力して行った神奈川県の調査で、飲酒運転で検挙された経験があるもののうち「アルコール依存症の可能性が高い」に該当していた者の割合は、男性47. 2%、女性の38. 9%に上った。 一般人口におけるアルコール依存症者の割合は、2003年の全国調査にて男性1. 0%、女性0. 2%とされているため、飲酒運転者の中にはアルコール依存症者が高い割合で含まれると言える。 診断 現在、世界的に見て、アルコール依存症は2通りの診断体系、ICD-10とDSM-5を用いて同定され得る。 それぞれ異なる診断基準を提示している。 国際疾病分類第10版 一つは、世界保健機関(WHO)()が定めるアルコールによる依存症候群である( 表1)。 尚、ICD—10ではアルコール依存症までには至っていないが、飲酒による問題が起きている状態を「」と表現している。 また、連続飲酒や離脱症状はないが、飲酒問題がある状態を「」と表現し、アルコール依存症とは言えないが適切な飲酒ができてはいないグループとして捉え、飲酒の減量あるいは断酒を目的とした介入が行われることがある。 表1.ICD-10が定めるアルコールによる依存症候群(分類コード:F10. 2) 以下の6項目のうち、通常過去1年間のある期間に以下の3項目を満たす事が必要である。 飲酒に対する渇望 2. 飲酒行動の抑制喪失 3. 離脱症状 4. 耐性の増大 5. 飲酒中心の生活 6. 有害な飲酒に対する抑制の喪失 精神障害の診断と統計マニュアル第5版 一方、アメリカ精神医学会の第5版()では、依存という名称が無くなり、前版のまでで定義されていたアルコール依存症という概念は「アルコール使用障害」のカテゴリーに含められることとなった。 診断基準11項目( 表2)のうち2〜3項目が該当すれば軽症、4〜5項目が該当すれば中等症、6項目以上が該当すれば重症とするアルコール使用障害の程度の重み付けがあるのみであり、依存症という診断概念そのものは定義していない。 表2.DSM5によるアルコール使用障害の診断基準 内容 診断項目 社会障害 物質使用の結果、社会的役割を果たせない。 社会障害 身体的に危険な状況下で反復使用する。 社会障害 社会・対人関係の問題が生じているにも関わらず、使用を続ける。 耐性 反復使用による効果の減弱、または使用量の増加。 離脱 中止や減量による離脱症状の出現。 自己制御困難 当初の思惑よりも、摂取量が増えたり、長期間使用する。 自己制御困難 やめようとしたり、量を減らす努力や、その失敗がある。 自己制御困難 物質に関係した活動(入手、使用、影響からの回復)に費やす時間が増加する。 自己制御困難 物質使用のために重要な社会活動を犠牲にする。 自己制御困難 心身に問題が生じているにもかかわらず、使用を続ける。 欲求 物質使用への強い欲求や衝動がある。 2〜3項目が該当すれば軽症、4〜5項目が該当すれば中等症、6項目以上が該当すれば重症。 成因 アルコール依存症の成因には諸説あり、さまざまな要因が関与するという考えが主流であるが、ほぼ確実と考えられているのはとの相互作用である。 やからアルコール依存症の50〜60%に遺伝因子が関与するとされるが 、具体的な遺伝子については同定が難しい。 その理由としては、他のと同様に、依存症には特定の遺伝子が強く関与するのではなく、影響の小さい複数の遺伝子が関与していることや、環境因子が関与していることがあげられる。 そこで、現在はとそれに関わる遺伝子のを探す試みが行われるようになってきている。 アルコール依存症の中間表現型には、合併精神疾患、アルコール代謝酵素の、(、、など)、アルコールに対する反応などが提唱されている。 なかでもアルコールに対する反応については、アルコールに対する反応が弱いことがアルコール依存症のリスクを高めるという実験がある。 この実験は、飲酒実験をしたときの酔いの強さをアルコール依存症のの有無で比較したもので、家族歴があって依存症のリスクが高いと考えられる被験者は家族歴のない被験者と比較して酔いの強度が低いことから提唱されている。 リスクの高い者は酔った感じが弱いので多量に飲酒し、飲酒時に感じられるはずの危険信号にも鈍感なのでそのまま飲み続けるのではないかと考えられた。 このような、アルコールの反応の弱さに相関するいくつかの候補遺伝子が報告されている。 このとアルコール使用障害やアルコールの効果に関する関連研究によって、GABRA2のマイナーな遺伝子多型がアルコールに対して反応が弱いことと相関すると報告されている。 一方、の遺伝子()はアルコール使用障害に関連する遺伝子のひとつであり、やがアルコールの報酬・強化効果に重要な役割を果たしていることから注目を集めている。 OPRM1遺伝子の多型が飲酒時のドーパミンの放出に関わり、アルコールへの反応を調節している可能性が示唆されている。 脳内メカニズム 一方で、アルコールを含む物質使用障害の生物学的基盤に目をやると、脳内とシステムのアロステリックな変化がアルコール依存症の成因を担っているとの研究が長年に渡って議論されてきている。 依存性物質が脳に影響する作用を解き明かす端緒となった重要な実験のひとつにOldsとMilnerらが行ったがある。 彼らは、の脳内のある部位に電極を埋め込み、限られた空間の中を自由に動けるようにし、室内のレバーを踏むと短時間電気刺激を受けられるようにした。 ラットは最初、箱の中を自由に歩き回っていたが、レバーを偶然に踏むと間もなく、レバーを繰り返し押すようになった。 時には、飲水や食事を摂らず、衰弱するまでレバーを押し続けた。 この実験において、電気刺激はレバーを押すという習性を「」する「」となっており、このように「強化」を効率よく引き起こす部位をを与える位置を移動させて検討したところ、中脳にがあって、を中心に、、に投射するドーパミン作動性神経線維に沿った部位であることが確認された。 その後の研究により、アルコールを含むの多くが、直接ないし間接的に腹側被蓋野から側坐核へ至るドーパミン神経に作用していることが明らかとなった。 アルコールは間接的に側坐核のドーパミン濃度を増やすと言われている。 そのメカニズムは、アルコールが腹側被蓋野や扁桃体、側坐核に発現しているGABAAレセプターに作用してGABAの放出を促し、さらに腹側被蓋野と側坐核、扁桃体中心核でオピオイドペプチドを放出させることに端を発する。 この腹側被蓋野と側坐核のGABAとオピオイドの放出を介して、側坐核でドーパミンの放出が起こるという仮説が示されている。 ドーパミンの放出によってのが生まれ、物質使用の使用初期にあたっては快の情動を求めて物質使用の頻度が増す。 この強化行動を「正の強化」という。 一方でSolomonは1980年にOpponent-Process Theory()を提唱した。 Solomonによれば、依存性物質使用後の快の情動はいつまでも持続せず、快の情動が立ち上がった後に、少し遅れてそれを鎮静する不快な情動が立ち上がり、情動はに偏ることなくを維持しようとする働きがあることを論じた。 また、快の情動は物質使用の繰り返しによって次第に減少し、それに代わって不快の情動が次第に増すという変化が起こり、初めは快を得るために物質を使っていたが、不快を避けるために物質を使うという物質使用の目的変化が起こることを唱えた。 この不快な情動を取り除くために物質使用の頻度が増すことを「負の強化」と言い、この「負の強化」による物質使用行動が強迫的になるという変化が指摘されている。 このような強化行動の変化は脳内ののな変化に裏打ちされていると言われている。 それは、「正の強化」行動の役割を担うドーパミンが関与する脳内報酬系の機能が減弱し、その代わりに「負の強化」行動を担う、ストレスホルモンと表現される(: Corticotropin-releasing factor)を介した脳内ストレスシステムの働きの方が優勢となることが推察されている。 以上の過程により、「負の強化」に対して強迫的となり、使用制御の困難という依存症の本質的部分が生み出されるという仮説が提唱されている。 治療 断酒または節酒 治療目標の設定は、断酒を原則とすることが通常である。 米国APA(American Psychiatric Association)の治療ガイドラインによれば、断酒継続が最も長期間の良好なアウトカムを示すと記述されている。 一方でコントロール使用を希望する患者が多くいるのも事実であるが、物質使用障害の患者がコントロール使用を選択するのは非現実的であり、治療者はアルコールを摂取し続けることの悪い結果を患者と共有し、長期間の断酒がもっともよい治療の選択肢であるという認識を共有していくべきであるとされている。 また、英国国立医療技術評価機構NICE(National institute for Health and Care Excellence)の治療ガイドラインでは、アルコール依存、または何らかの精神的あるいは身体的合併症のあるアルコール使用障害には断酒をすすめるべきであるとされている。 患者が節酒を望む場合には断酒が最も適切な目標であることを強くすすめる。 しかし、断酒をゴールとしないからと言って治療を拒んではならない。 断酒を目標に考えていない患者には、ひとまず減酒を提案するなど、飲酒によって被る害を減らすことに注目したケアを行ってもよい。 しかし、それは断酒を見据えてのものでなければならないとされている。 離脱症状のコントロール アルコールのが出現している場合、まずは離脱症状のコントロールが重要となる。 離脱症状の全てに対して系薬剤(benzodiazepines)の使用が推奨されている。 期における、、上昇、などの症状、アルコール離脱やに対してもアルコールと、交差依存をもつベンゾジアゼピン系薬剤の投与が推奨されている。 こうしたベンゾジアゼピン系薬剤の使用によって、アルコール離脱の症状の軽減のほか、致死率の低下、出現時間の短縮、興奮状態の鎮静に要する時間の短縮、せん妄のコントロールが適切にできるとしている。 前述のNICEのガイドラインによれば離脱症状がコントロールされた後の治療選択肢の基本原則については、全ての患者に有効な単一の治療法はない、とされている。 種々の(NICEでは(MET)と英国で発展した心理社会的治療法の一つである(SBNT)を比較している)の有効性を比較したところ、治療の成功と患者側の特性について有意な因子を発見するに至らなかった、という報告がその裏付けとなっている。 そのため、同ガイドラインではそれぞれの患者のニーズに応じた治療が提供されるべきであると論じられている。 我が国で行われている代表的な治療について述べる。 薬物療法 本邦ではアルコール依存症の飲酒への渇望を抑制する薬剤として、 acamprosate を用いることができる。 同薬剤はの一種であるの誘導体で、と類似の構造を示す。 明確な作用機序は不明であるが、脳内のの働きを抑制することで、渇望を下げる役割があるとされている。 臨床的には、飲酒欲求を抑えること、飲酒頻度を抑えること、断酒率を高める効果があることが多くの臨床研究で報告されている。 また、、の2剤のを使用することができる。 ともにアルコールの代謝を阻害することで、少量の飲酒でも体内にが蓄積し、、、、などの不快な症状が出現する。 抗酒剤の服用には患者自身が、アルコール依存症を治療するという意思を持って自ら服用することが重要である。 心理社会的治療 もう一方は心理社会的治療である。 集団療法 として、AA(Alcohol Anonymous)のミーティングや断酒会の例会への参加がある。 有効性の一例を挙げるとすれば、ミーティングや例会ではとおよびが身につく。 他者にできる能力や理解する能力も開発される。 自助グループの集団の力は、アルコールによって人生の軌道から外れてしまったアルコール依存症者が社会復帰にあたって学ぶ必要のある様々な社会経験を積む事ができる、いわば有効なリハビリテーション装置である。 個人療法 集団療法に並行して個人の特性に合わせたを実施する。 断酒の決意を促すためにはが効果的であり、断酒した後の生き方を変えていくために、が行われる。 動機づけ面接法は、面接者と患者が対立しないように配慮を持ちつつ、直接的な指示こそしないが面接を通じて患者の断酒へのモチベーションが高まるように、そっと誘導する指示的な技法である。 認知では、依存対象物質(アルコール)が状況を改善する(気分をよくする)という信念を変えて物質への渇望を抑制すること、再燃予防、飲酒が不要となる新しい生き方の学習を目的とし、アルコールにまつわる認知や行動を修正していくことに主眼を置いている。 疫学 2013年に成人の飲酒実態に関する全国調査が実施された。 ICD-10によるアルコール依存症の生涯経験率は2013年では1. 0%(男1. 9%、女0. 2%)で、推計数は107万人(推計数は2013年日本人口で計算:男94万人、女13万人)であった。 アルコール依存症の現在有病率は2013年では0. 5%(男:1. 0%、女0. 1%)で推計数は57万人であった。 アルコール依存症の罹患者数は、2008年の調査では、アルコール依存症の生涯経験率は、男1. 0%、女0. 2%で推計50万人、現在有病率は男0. 5%、女0. 1%で推計29万人とされており、増加傾向にある。 一方で、アルコール依存症のうち、数%の者しか医療に結びついていないとも指摘されている。 2008年の調査で、アルコール使用による精神及び行動の障害による受診患者数の推計値(入院+外来)の17,200人はわずか6%にすぎず、アルコール依存症ではあるが、多くの者が医療に結びついていない可能性がある。 関連項目• 参考文献• ジャン=シャルル・スールニア(著)本田文彦(監訳) アルコール中毒の歴史 法政大学出版社 1996. 中山秀紀、樋口進 依存症・衝動制御障害の治療「物質依存の概念」 中山書店、東京、p2—13• 柳田知司 動物における薬物依存研究のあゆみ 脳と精神の医学 7 2 .137—142.1996• ISBELL, H. , FRASER, H. , WIKLER, A. , BELLEVILLE, R. 1955. 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